来週末までに患者数が増えなければ日本国内は収束に? 新型コロナウイルスと危機管理体制の課題は
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 新型コロナウイルスの感染がさらに広がり、中国本土の感染者は4日、2万人を超えたことが明らかになった。感染者は中国本土のほか、26の国と地域に広がっていて、日本でも武漢からの帰国者を含め20人の感染が確認されている。中国に次いで2番目に多い感染者を抱えており、今後、国内での感染は広がるのか。

 3日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した東京慈恵会医科大の浦島充佳教授(公衆衛生学)は「日本では今週、あるいは来週いっぱいくらいを見て患者数が増えなければ、“あの大騒ぎはなんだったのか”というくらい、何もなかったのように終わっていくシナリオが考られる」と話す。

 「先月27日に中国が団体旅行を中止して以降は旅行者が減ったこと、国内での感染が武漢から来た人たちのツアーを担当した運転手とガイドといった人たちが中心だったということがある。潜伏期間が平均5日で、初期症状は咳・鼻水・微熱と、いわゆる風邪と区別が付かず、バスの運転手もそうだったように、解熱剤を使えば働けるくらい軽いものだった。それから8日~9日くらい経つと急に肺炎のようになって具合が悪くなり、仕事どころではなくなって病院に行くと、診断がつくというパターンだ。つまり、トータルで14日。中国の団体旅行中止から、ちょうど14日が過ぎたので、中国から来た旅行者からの感染で新たな患者が出るということはほぼ無くなるだろう。確かに三次感染の可能性はあって、普通の風邪として診断され、周囲に感染させてしまっている人もいるかもしれないので、もう1週間加え、来週いっぱいくらいまでに誰からうつったか分からない日本人が発生したり、人から人への感染が少し増えることがなければ、一旦は落ち着くのではないか」。

 また、中国と日本の重症化や死亡率の違いについて浦島教授は「おそらく環境に原因があるのではないか」と推測する。

 「脅威は発生している地域によって全く違っていて、死亡率は武漢が5.1%、湖北省が1.4%。中国が0.18%となっている。一方、中国以外の人で感染して亡くなった人は0%だ。この病気が発生したばかりの頃のウイルスの遺伝子配列と、直近の遺伝子配列を比べると、99.9%同じ。つまりほとんど変異を起こしていない。当初は新しい病気だと気付かずに家で寝ていれば治ると考え、ギリギリまで通院しなかったということがあると思う。また、武漢では病院がキャパオーバーを起こしているという事情もあると思う。さらに、肺炎ということから考えて、大気汚染も考えられる。武漢に住む中国人によると、この時期は集合住宅で暖をとるのに石炭などを使っているので、大気汚染がひどいのだという。それによって肺が元々ダメージを受けていために悪化しやすい、ということも考えられる」。

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 一方、政府は今月1日から外国人の入国を制限、2日までに8人の入国を拒否。さらに安倍総理は簡易検査キットの開発に着手したことを明らかにしている。また、3日には横浜の沖合に停泊しているクルーズ船の乗客乗員約3500人について、厚生労働省が夜を徹しての検疫を実施している。

 ただ、日本ではこうした対応について各省庁が“縦割り”なのが現状だ。具体的には現地の日本企業からの情報収集は経済産業省、帰国者を乗せるチャーター機を航空会社と調整するのは国土交通省、その発着を中国政府と調整するのは外務省、帰国者の対応は厚生労働省、中国からの入国制限は法務省、といった具合だ。これに対しアメリカでは保健福祉省の下部組織で約170の職種・約8500人の職員を擁するCDC(疾病管理予防センター)が感染症対策の指揮を執ることになっており、各保険機関や地域組織との連携や調査、ガイドラインなどを担っている。

 浦島教授は「やはり縦割りでやっていると行動がちぐはぐになってしまう。そこは情報をシェアし、チームワークよくやっていくべきだ。日本の国立感染症研究所はCDCに該当する機関ではあるが、人数も桁違いに少ない。なおかつ厚労省の管轄になるので、他の分野はノータッチだ。いろんな省庁から同じ場所に出てきて、こういう危機を乗り越えることが必要だ。今回のようなパンデミックは毎年起こるものではないが、温暖化によって大きな水害は毎年起こるようになった。オリンピックもあるし、テロ対策もあるので、自然災害、テロ、パンデミック、すべての危機管理に対応できるような一元化した組織は日本にも必要ではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:浦島教授に聞く「新型コロナウイルス」

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