WHOも忖度、情報共有に遅れ…新型コロナウイルス対策で習近平体制の問題が浮き彫りに?
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 1000万人都市・武漢から世界28の国と地域に広がった新型コロナウイルス。そこで指摘されているのが、情報公開など、中国指導部の初期対応の遅さだ。武漢市の周先旺市長は、情報公開の遅れについて「地方政府として情報を得たのち、許諾を得てやっと公開できる」と答えていた。

 今月3日には中国では共産党の最高指導部が会議を開き、新型コロナウイルスの拡大を「有事」と認めた。会議で習近平国家主席は「新型コロナウイルスへの対応で明らかになった欠点や不足部分を補っていかなければならない」「防疫のための総力戦が始まった」「命令を必ず実行する必要がある」と述べ、「最前線の医療スタッフの需要を満たせ」「春節Uターンでの感染を防げ」「有効な薬とワクチンの研究開発を強化せよ」「正常な経済と社会秩序を維持せよ」「世論を指導し、第一線の感動物語を生き生きと伝えよ」などの指示を下したという。

 実際の指導部の対応はどういったものだったのだろうか。昨年12月8日、武漢市で新型とみられる「原因不明の肺炎患者」が確認され、31日には市当局が「原因不明のウイルス性肺炎を27人が発症した」と発表。年が明け、1月9日には初の死者、15日にはヒトからヒトへ感染の可能性を認めるに至った。20日に習国家主席が「撲滅」を指示すると、22日に中国政府当局が初会見。翌日からは武漢の駅や空港など封鎖された。27日には李克強首相が武漢を視察、団体旅行を禁止に。今月1日には、李首相が春節Uターン時期の分散を指示、そして3日の会議となった。

 講談社特別編集委員の近藤大介氏は武漢市について「“模範都市”で、習近平体制の“象徴”」だと説明。「2012年11月に習近平氏が共産党トップに立った時、12の標語からなる社会主義の革新的価値観を打ち出したが、それらを真っ先に実践しようと運動を起こしたのが武漢市だった。たとえば繁華街で歩いてる人を捕まえて、“社会主義の革新的価値を言ってごらん?”と問うて、答えられなかったら研修所に連れて行くということをして表彰されている。そういうことで出世したのが今の市長や湖北省長だ。今回、新華社通信が長い記事を書いているが、謝罪は一切していない。“すごく突然のことで混乱もあった。でも、そこから立ち上がって14億人を助けるために頑張っている”というような、弁明に終始した文章だ」。

 その上で「情報が上に届くまでに時間がかかるのが習近平政権の体質だ。そもそも年末の時点では8人の医師がネットに情報を上げていたし、SARSを撲滅し英雄となった医師が先月18日に武漢へ行き、20日には“武漢を封鎖し、専門の病院を作って隔離しないと”という報告を上げている。一方、習主席はその間ミャンマーを訪問し、19日~21日までは雲南省に行っている。普通はこういう事態が起きれば中止するはずだ。しかも20日夜の中央テレビのニュースでは、“習近平政権が、今年の春節はみんなこんなに幸せだと言った”と報じていた。本当に危機が伝わっていれば、こうはならなかったと思う。SARSの時は北京市長を93日でクビにして海南島に飛ばされていた王岐山を持ってきたし、厚生労働大臣に当たる衛生部長もクビにして副市長と兼任させるなど、危機対応ができていた」とした。

 また、WHO(世界保健機関)の対応については、新型コロナウイルスのリスクについて“中程度”の表記は事務的ミスで“高い”の間違だったことが発覚しているが、「テドロス事務局長の母国・エチオピアは一帯一路の要衝で、中国から多大な投資を受けていて、中国に強く出られないのではないか」「これは中国に配慮して危険性を低く表記しているのか」など、WHOが中国に忖度しているのではないか、との見方も浮上している。

 近藤氏は「その通りだと思う。そもそも前事務局長は香港人で、習近平氏も2017年1月にWHOの本部に行っている。そして彼が同年7月に退任すると、中国が起用したような形でテドロス事務局長が就任した。エチオピアにはアフリカ連合の本部があるが、このビルを作ったのも中国だし、インフラのほとんどを手掛けている。やはり中国の意に反することは言いにくいのではないか。WHOは先月30日に緊急事態宣言を出しているが、これを中国は“突発的事件”と訳している」と指摘。「中国政府の立場を慮れば、正確な数は数えられなし、むしろかなり数を少なくしているような気がする。ただ、他の要因による肺炎もあるはずだが、新型コロナウイルスで亡くなった方だけをカウントしているし、中国では治っている人もいる」とも話した。

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 そして、中国だけでなく、世界経済への打撃も懸念されている。大手居酒屋チェーン「ワタミ」は新型肺炎の感染拡大を受け、直営店7店舗を春までに中国から完全撤退させるなど、多方面で影響が出ている。米ブルームバーグは、iPhoneの製造やサプライチェーンの拠点が上海に近い河南省にあり、組み立てや出荷への影響は免れないと報じ、自動車業界ではフォード、日産、ホンダなどが中国国内の工場の一部の操業を停止。韓国のヒュンダイ自動車は、中国からの部品供給の混乱から、韓国国内の工場の操業停止を検討していると報じている。

 法政大学大学院の真壁昭夫教授は「武漢は非常に重要な都市だ。人口1400万人だが、周辺の経済圏を合わせると3400万人くらいになり、GDPは1兆3千億元(日本円で十数兆円)だ。もともと鉄や自動車の工業都市だったので、日本の自動車メーカー、部品メーカーもいる。例えば韓国のヒュンダイでは武漢から部品が出なくなったことで、国内3つの工場を閉鎖させることにした。加えて最近ではIT関連もある。そして武漢に限らず、中国経済は一言で言えば開店休業状態になっているので、中国に生産拠点をいっぱい持っている日本企業も対策を練っている状況。これから影響は出てくるだろう」と指摘、「マーケットの人たちはSARSを参考にしていて、大体7カ月くらい、つまり6~7月までにはなんとか終息するだろうという前提で見ている人が多い。しかし残念ながら大きな混乱になる可能性は否定できない。中国が抱える経済の問題には大きく分けて2つあり、借金が多いことと、不動産バブルがまだ潰れていないということ。借金が多くてバブルが潰れると、日本の90年代後半になってしまう」と警鐘を鳴らした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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