新型コロナ“水際対策”の有効性は 新型インフル時の教訓「国は情報の一元化を」
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 5日に新型コロナウイルスの感染者10人が確認された、横浜港沖に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」。厚生労働省は6日、新たに10人の感染が確認されたと発表した。

 同船の乗員・乗客約3700人のうち、体調不良を訴えた人とその近くにいた273人についてウイルス感染の検査を行っている。5日の時点で感染が確認されたのは、分析が終わった31人のうち日本人3人を含む10人。さらに6日、新たに検査が終了した71人のうち、日本人4人を含む10人にコロナウイルスの陽性反応が確認された。6日時点で102人の検査が終了し、そのうち20人に感染が見つかったことになる。

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 一方、まだ検査が終了していない161人を含め、乗員・乗客の船内待機は続く。政府は、船内で感染が広がることを防ぐため、なるべく自分の部屋から出ないよう要請している。また、食料や物資など物質的な援助も行っているが、相次ぐ感染者の確認で不安が高まり船内でパニックが起きないよう、今後は心のケアも重要となっていく。

 クルーズ船内の状況について、検査を受けた乗客の男性からは「室内の電話で(乗客と)連絡を取り合っているが、やはり皆さん『不安だ』と。私自身、検体の結果がまだ出ないので嫌な気持ちになってくる。14日間は部屋から出ないでくれと言われている状況で、船外に出ることは考えられない」という話が聞かれる。

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 日本のここまでの“水際対策”は功を奏しているのか。政治学者で東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は「体制としては、以前から検討されていた新型インフルエンザのパンデミックに対する想定を適用している。ただ以前の新型インフルへの対応の教訓というのもあって、それが十分に生かされているのかという指摘が最近専門家からあがってきた」と話す。

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 2009年に流行した新型インフルエンザへの対応を受けて、厚労省は翌年、水際対策への教訓を示している。その中では、専門家の意見に基づいて水際対策を機動的に縮小することなどが提言され、「水際対策」という用語についても「『侵入を完璧に防ぐための対策』との誤解を与えない観点から、その名称について検討しつつ、その役割について十分な周知が必要」だとしている。

 佐藤氏は「水際対策というと『なんとか入れないようにしよう』と考える。今回のクルーズ船も、武漢からの帰国者も、『全員隔離してしまえばいい』とか、『全員を検査すればいい』という声は大きい。しかし、外野から言うのは簡単だが、実際には隔離先も、検査する検疫所などの処理能力は限られている。担当者も必死にやっている。そこで考えなければならないのは、感染者が世界に広がっている状況下で、防ぎ切ることだけに注力していていいのかということ。ましてこの体制が想定している新型インフルとちがって、今回のコロナは無症状でも他の人にも感染する可能性があるという点で、防ぎ切るのはさらに難しい。医療のリソースは限られているということを前提に置いて次の一手を打つことが重要になってくる」と指摘。

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 一方で、「国としてもこうした教訓があるのはわかっているが、こういった選択にいつもプレッシャーをかけているのは世論やメディア。我々も政府の資源が限られていることを前提に、現実的な落ち着きどころを見出していかなければならない」と指摘した。他方で「政府にもするべきことがある。新型インフルの想定のなかでは広報担当者を決めて情報を一元化することが予定されていた。ところが、今のところ政府の国民に説明する担当者は一元化されていない。今の時点で大きな齟齬は生じていないが、厚労省や内閣が情報を一元化して国民にわかりやすく伝える努力をすれば、世論の理解につながりやすい」とした。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

映像:現在のクルーズ船内の状況は

部屋の中でもマスク着用…現在の船内は
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