2月7日にインドネシアのジャカルタで開催されたONE Championship「WARRIOR’S CODE」に出場した内藤大樹(BELL WOOD FIGHT TEAM)が、3-0の判定でサバス・マイケル・ペッティンディーアカデミー(キプロス)に判定勝ちで3連勝。2度のダウンを奪い、ムエタイ・欧州キックのチャンピオン級がひしめき合うONEのキック・ムエタイで価値ある1勝を挙げた。
元シュートボクシング日本スーパーバンタム級王者の内藤。国内では那須川天心との戦いに敗れた印象がひとり歩きしていたが、BELL WOOD FIGHT TEAM同門の鈴木博昭を追う形で、アジア有数のキック・ムエタイリーグとなったONEに殴り込みをかけ勝ち星を重ねて来た。
今回は中堅選手中心のマッチメークから一転、20歳と若くONEの中でも有数の実力者、マイケルとの対戦。キプロス出身ながら、タイの名門ペッティンディーアカデミージムで腕を磨き、ONEの舞台で元ルンピニースタジアムフェザー級王者のシントンノーイを撃破、続いで元ラジャダムナン3階級王者のルーシラー・チュムペートゥアには接戦で敗れたもののチャンピオン級との呼び声高い。この対決の結果次第でタイトル戦線のふるいから落とされるか、時期挑戦候補に名乗りを上げるかが決まる大事な一戦だ。
リングイン前にマイケルは、タイ人コーチら「チーム・サバス・マイケル」と共に円陣を組んで臨戦体勢。若くして強いキックのトップファイターという共通点、実況の「キプロスの天心」という命名もあながち間違いではないムエタイ界のエリートだ。しかもニックネームは「ベイビーフェイス・キラー」と「壊しのベビーフェイス」こと武居由樹を彷彿とさせ、確実に「強い奴」という雰囲気が漂う。
序盤の攻防を見る限りでは、内藤にはやや分の悪い立ち上がりだった。リーチの長いマイケルの伸びのある左ジャブ、ミドルと圧が強い。内藤も前蹴りで距離を取り反撃に出るが、マイケルの長い距離から至近距離へのヒザやローなど多彩な攻撃が続く。
ここまで全く歯が立たない展開も、内藤がアイポークを主張。ひと呼吸の中断を経たことで流れを引き戻して迎えた2ラウンドに大逆転の一撃を放つ。
マイケルがワンツーでたたみかけるパンチの挙動を冷静にかわし内藤はカウンターの右ストレートを的確に相手のアゴに当てダウンを奪う。尻をつくフラッシュぎみのダウンだが確実に効いている。やや冷静さを欠いたマイケルが激しい打ち合いにでるが、内藤がカウンターで的確にパンチを当て、カーフぎみの右ローを軸にいなしながら優位にラウンドを終える。
最終3ラウンド。前のラウンドで主導権を奪われたマイケルが荒々しくアグレッシブな攻撃に転じる。しかしマイケルのワンツーに再び内藤の右ストレートがクリーンにアゴを捉えると、鈍い音と共にマイケルが前に倒れ込み2度目のダウン。ラウンド後半は、取り戻そうと必死にパンチを振るうマイケルに粗さが目立ち、内藤がローを使いながら冷静にいなしながら試合終了。2ダウンを奪った内藤に凱歌が上がった。
AbemaTVで実況を務めた大沢ケンジ氏も「この世界でやっていけるぞ!」と興奮気味に語ったが、現在のONEのキック・ムエタイの選手層は間違いなくトップクラスだ。本場タイの王者経験者が各階級に名を連ね、欧州のキック・ムエタイの実力者や新進気鋭の若手が、毎大会入れ替わり出場する「モンスターの巣窟」、内藤の勝利の意味は非常に大きい。
試合後のインタビューで「チャンピオンを狙いたい」と3戦目にして、はじめてタイトルについて口にした。ONEのフライ級ムエタイ世界王者は、那須川天心を徹底的に苦しめたロッタン・ジットムアンノンである。圧倒的なパワーと技術でONEを席巻してきたロッタンに内藤の卓越する技術が通用するか、早期のタイトル戦に期待したい。新天地を求めてONEに参戦した内藤大樹だが、早くもこの「怪物クラブ」でその実力を発揮しつつある。