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(必殺技・マジカル魔法少女スプラッシュで勝利した坂崎。難易度の高い技を軽々と決める)

 女子プロレス世界は団体間の交流が盛んだ。選手は他団体の大会に参戦することでより磨かれるし、マッチメイクにも幅が出る。ただ交流が盛んすぎて流れや団体ごとの特色をつかみにくい部分もある。

 そんな中で、東京女子プロレスは基本的に他団体と交わらない。ビッグマッチで大物選手がゲスト出場することはあるが、トーナメントやシングル王座戦には絡んでこないのだ。笑いの要素も含め独自色が強いのは、そのことにもよるのだろう。

 その一方で、海外の団体とは積極的に交流を持つ。外国人選手がたびたび登場しているし、東京女子所属レスラーの海外遠征も多い。エース・山下実優は昨年、アメリカでSHINE王座を獲得し2冠女王になっている。

 現プリンセス・オブ・プリンセス王者の坂崎ユカも海外の団体から引っ張りだこの選手だ。ケニー・オメガが副社長を務めるアメリカのAEWに続き、1月にはイギリスの団体EVEに参戦。ラナ・オースチンと15分時間切れ引き分けの闘いは大喝采を浴びた。2月11日には、来日したラナとベルトをかけての決着戦を行ない、2度目のタイトル防衛を果たしている。イギリスで生まれたストーリーが日本でのタイトルマッチにつながるというのが東京女子プロレスらしい。

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(1月には山下実優を下しており“安定政権”も見えてきたか)

 リマッチかつタッグでの前哨戦もあっただけに、試合は裏の読み合いに。ラナが坂崎の場外ダイブを阻止したのをはじめ、互いの得意技をなかなか出させない。それでも切り返しの攻防で上回った坂崎が、マジカル魔法少女スプラッシュを決めて勝利している。

 両者にはかなり体格差があったのだが、大きいラナが“動ける”選手であり、また坂崎がパワーの違いを感じさせない闘いを見せたことで、2人ならではの試合になった。防衛後の坂崎に“対外国人”について聞いてみると「重心がどこにあるかっていうところから、日本人と根本的に違ったりするので。同じように見えて違うっていうのが刺激的で好きです」。

 大きさや重さよりも先に「重心」という言葉が出てくるあたり、坂崎のプロレス観が分かるようで面白い。次の防衛戦は4月に初開催の東京女子プロレス・アメリカ大会を希望しているという。

「誰がきてもいいです。宇宙人でも火星人でも地底人でも、日本人でもアメリカ人でもイギリス人でもいいのでやりましょう

 繰り返すが日本の他団体とは基本的に交わらない。しかし坂崎なら地底人ともいい試合ができてしまうんじゃないかと思わせる。そういうところが、いかにも東京女子プロレスなのである。

文/橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

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