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(2020年赤井にとって勝負の年となる)

 2月24日のDDT名古屋大会で、団体唯一の女子選手・赤井沙希が「おきばりやす七番勝負」第4戦を行なう。対戦相手は名レスラー、テリー・ゴディの娘であるミランダ・ゴディだ。つまり“浪速のロッキー2世vs人間魚雷2世”である。

 ただ赤井自身は「父親がリングで闘うわけではないので」と語っている。自分が赤井英和の娘であるという事実は変えられないし誇りでもあるが、しかし闘うのはあくまで「赤井沙希」なのだ。

「この七番勝負が終わった時に、新しいキャッチフレーズがつくようにしたい」

 赤井は2013年にプロレスデビュー。芸能界からの挑戦、かつ2世ということで注目を集めた。

「やっぱりイロモノというか、他団体の“プロレス生まれプロレス育ち”の人たちにはよく思われていないことが多かったです。実際にそう言われたこともありますし。そういう中で“自分は自分”と思いながら何か爪痕を残そうと。だから七番勝負の3戦目で山下りな選手に“同期だから”と言われたのは嬉しかったですね。私のことをそういうふうに見てくれてるんだって。私は山下りな選手、夏すみれ選手、彩羽匠選手と、今の女子プロレスのトップ戦線で闘ってる凄い選手たちと同期なんです。じゃあ私も私ができることをやっていかなきゃいけないなって」

 プロレス界において「七番勝負」は、選手の奮起を促し飛躍の機会とするためのものだ。団体としても赤井のステップアップを望んでいるのである。赤井は「選手がたくさんいるDDTの中で、シングルマッチをやらせてもらうこと自体が貴重。そこはプレッシャーにもなるし、プレッシャーに感じてる時点でどうなのっていう思いもあります」と言う。レスラーとしての“生まれ育ち”が独特なだけに、成長の仕方にも決まったレールはない。

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(ERUPTIONの初戦では強豪ユニットALL OUTに勝利)

「DDTで育ったので、普通の女子選手がしているような経験をしていないんですよ。女子同士で厳しく鍛えられたりとか。大事に育てていただいた感じです。でもDDTじゃないとできない経験もたくさんしてきたので。そこは誇りですね。DDTだからこそプロレスをやろうと思ったし、今の自分でよかったと思います」

 団体内で女子は一人だけ。普通にしているだけでも目立つし、赤井は試合に華があるタイプだ。ただ根っこの部分は「泥臭くもがいてるんです」と言う。

「自分を派手で華やかで、パリピみたいなイメージで見る人がいるって知った時は驚きました。まったく逆なので。みなさんが想像するような2世ではないというか、いろんな修羅場をくぐってきてます」

 七番勝負が進む中で、坂口征夫、樋口和貞と新ユニット「ERUPTION」を結成した。ユニットの正式メンバーになるのは、これが初めてだ。

「自分の可能性を考えたいと思っていた時に“初めてのことがまだあったんだ”って。坂口さんと樋口くんの2人だと怖すぎるので私で中和したいし、2人にはない発想も出てくるかなと。2人からは私にないものを教えてもらえると思います。全員、個性はバラバラなんですけど信念みたいなものは一緒。それは“DDTをもっと魅力的にしたい”ということです」

 赤井が気にしているのは、DDTトップ戦線の固定化だ。

「メインで大会を締めるメンバーが、だいたい同じような気がして。それを崩していきたいです。トップで活躍してるみんなは確かに凄いけど、それを見てるだけでいいのかって。

 今は前半戦に出る選手とタイトル争いをする選手が分かれている感じですよね。KO-D無差別級のベルトを獲って衝撃を与えたのは里村(明衣子)さんや田中(将斗)さん。“お外”の方なので。そのことにDDTの選手は危機感を感じなきゃいけないですよね」

 もともとDDTでは男女混合のミックスドマッチをやってきたから、男子選手との闘いにも違和感はない。七番勝負とERUPTIONで赤井沙希とDDTの風景がどう変わるか。今年の彼女は大きな役割を担っている。

ゲームの『ストリートファイター』に春麗がいるのは、誰も変だと思わないじゃないですか。それは強くて魅力的だから。もし自分が男子と闘うことに違和感があるとしたら、それをなくしていくのも自分の仕事だと思ってます。みんな男とか女の前にプロでレスラーなので」

文/橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

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