(ド迫力の打撃で MAOを圧倒していった田中)

 DDTマットを、ZERO1の田中将斗が席巻している。リーグ戦「D王グランプリ」では無敗の優勝。HARASHIMAが持つKO-D無差別級タイトルに挑戦するとここでも勝利し、頂点のベルトを手に入れた。

 1973年生まれ、2月28日で47歳の田中。ベテランの闘いぶりはあくまでエネルギッシュだ。対戦相手は、誰もがそのコンディションのよさを認める。D王決勝で対戦した遠藤哲哉曰く、田中は「マットに寝ている時間が少ない」。倒れてもすぐに立ち上がり、動き続けているというわけだ。エルボー、ラリアットにテーブルクラッシュダイブと、ファイトスタイルは“弾丸戦士”のキャッチフレーズそのまま。ハードコア・ファイターとして世界的に知られるレジェンドでもある。

 2月23日のDDT後楽園ホール大会では、初防衛戦でMAOと対戦した。MAOは23歳の新鋭で、今回がKO-D無差別級王座初挑戦。空中殺法とともに「変なプロレス」も得意としており、試合中に社用車に乗り込んで“大社長”高木三四郎をはね飛ばしたこともある。

 この試合も激しい場外戦、 MAOのプラケース攻撃と荒れた展開に。 MAOはプラケース目掛けて河津落としを敢行(つまり自分も痛い)するなど“DDTクレイジー路線”の次世代エースぶりを見せつけた。

 その“変なプロレス”にも対応するのが田中の懐の深さだ。場外では、 MAOのステージからのムーンサルト・アタックをかわしてフロアにブレーンバスター。テーブルクラッシュダイブも決めた。打撃戦でも真っ向勝負を繰り広げ、最後はラリアット、そして必殺技スライディングDを2発叩き込んで3カウント。

 スピード、スタミナ、パワーでも若い選手に負けないところを見せ、なおかつ「変なプロレス、紙一重かもしれないけど対応できたね」と田中。 MAOの闘いぶりについては「変なプロレスだけど、一本筋が通った変なプロレス」と評価した。

 一方、初挑戦を終えたMAOは「相手が田中さんでよかった」とコメントしている。この試合、 MAOが“KO-D無差別級王座戦線の一角”“シングルで後楽園のメインを張れる選手”として確立したという部分でも意味のあるものだった。

 試合後、田中は次の挑戦者に竹下幸之介を指名。「俺がDDTで闘いたかったのは遠藤、HARASHIMA、竹下幸之介」とトップ選手総ナメを狙う。竹下はこの日のセミファイナル、ユニバーサル王座決定戦で敗れているのだが、DDTの“顔”の1人であることには変わりないということだろう。

 後楽園のメインで王座防衛を果たした翌日には、団体として再出発した「超花火プロレス」の川崎大会に出場。田中はZERO1とともに2団体所属となり、セミファイナルで「超プラズマ爆破デスマッチ」に挑んだ。

 振り幅もタフさも一級品としか言いようがない田中の活躍ぶり。3月1日のZERO1後楽園ホール、旗揚げ19周年記念大会では杉浦貴との「弾丸ヤンキース」で関本大介&岡林裕二と対戦する。47歳と49歳のタッグはDDT王者&ノア(ナショナル)王者コンビでもある。田中はここにきて、キャリア何度目かの全盛期を迎えていると言っていいだろう。

文/橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング