2月28日、秋山成勲がONE Championshipでの2戦目を迎える。場所は団体の本拠地シンガポール。新型コロナウイルスの影響で無観客試合となったが、秋山にとって重要な試合であることには変わりない。
昨年6月のONEデビュー戦は判定負け。しかし40代で真っ向からの打撃勝負を展開し、観客を沸かせた。もちろん、本人はそれに納得していない。
「勝つにも負けるにも理由はある。前回は試合感覚が鈍ってましたね。それが敗因というわけではないけど(ケージではなく)リングも久々で。それと打撃ばかりじゃなく組む展開もやらないといけない。そんなバカバカ殴り合って、子供じゃないんだからって(笑)」
今回、対戦するのはジェルフ・モハメド。秋山は相手の研究よりも、まず自分を仕上げることを重視してきたという。
「自分のトレーニング、自分の可能性について自問自答してきましたね。1戦目は不安で仕方なかった。でも今は期待に変わってます」
自分が最も動きやすい体を求めて練習してきた結果、1月の時点でウェルター級のリミットをクリアすることに。それでもパワーは変わらないという。また「この感じだとライト級も視野に入れられる。まずはウェルター級で勝たなきゃいけないけど、2階級で考えても面白いかも」とまで言う。
練習はハワイ、タイなどさまざまな場所で行なってきた。あえて“拠点”を作らないのにも理由がある。
「常に転校生でいたいんです。その場所に溶け込むのもいいけど、いつもと違う練習方法やリズムでやっている慣れない場所、そこに適応しようとすることで自分のポテンシャルが上がると思うので」
取材陣に公開した練習の最中、8歳の愛娘から電話がかかってきた。試合に向けて離れて暮らす期間も、常に連絡は取り合っている。試合も観戦に来ているそうだ。
「前回、初めて生で見て。今度は勝つところを見せたいですね。何を教えるというんじゃないですけど、辛いことをやっている姿を見ることで何か感じてもらえたらいいなと。父親としてできるのはそれくらいなので」
1975年生まれ。今年45歳になる。MMAファイターとしては日本だけでなくUFCという世界最高峰の舞台にも立った。テレビでも知られる顔になった。それでもなお、ONEという闘いの場に戻ってきたのはなぜなのか。
「一番(の理由)は好きか嫌いか。好きなんです、格闘技が。今こうして動ける体もあるわけですしね。テレビに出てお金をもらうより闘ってお金をもらうほうが単純に嬉しいです。勝っても負けても一生懸命やって、その結果としてお金をもらう。凄いありがたみがありますよね。生きた金だなと。すぐ使いたくなっちゃうんですけど、そこは我慢して(笑)」
今回の試合、まずは勝つことが何よりも大事だ。その上で、どれだけの“プラスα”を見せられるかも意識している。
「魅せる試合、渋いな、カッコいいなという試合ができれば。“あいつ本当に45なの!?”っていう。そうなったら、本当の意味での“セクシーヤマ”じゃないですか」
文/橋本宗洋