新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府がスポーツや文化イベントの延期や中止を要請したことについて、ある劇作家が表明した“意見書”に賛否の声があがっている。
劇作家・演出家の野田秀樹氏は1日、自身の公式ホームページに『公演中止で本当にいいのか』とする意見書を掲載。政府の公演自粛要請について、「感染症の専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、予定される公演は実施されるべき」と自身の考えを示した。
また、「演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術」とした上で、「ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません」「公演収入で生計をたてる多くの舞台関係者にも思いをいたしてください。劇場公演の中止は、考えうる限りの手を尽くした上での、最後の最後の苦渋の決断であるべきです。『いかなる困難な時期であっても、劇場は継続されねばなりません』」と訴えている。
この意見書について、BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「演劇の世界には、古くから“ショウ・マスト・ゴー・オン(一度始めたら続けなければならない)”という言葉がある。演劇はその場で体感しないと意味がない芸術で、クリエイターとしての野田さんの心情は理解できる」とコメント。一方で、「この翌日に専門家会議が屋内の閉鎖的な空間は集団感染のリスクがあると発表していて、今の段階だと潮目が変わってきている部分もある」と指摘する。
そんな中、椎名林檎がボーカルを務める人気バンドグループ「東京事変」がこの週末、予定通り東京公演を行ったことに対し、SNS上では批判の声も上がっている。開催に際して主催者は「会場では感染の拡大防止に務める」とした上で、希望者にはチケットの払い戻しにも応じるとしていた。
この件に関して神庭氏は「あるインターネットのニュースサイトは、Perfumeが2月25日の東京ドーム公演について参加者に判断を委ねた上で払い戻し対応するとした時、“神対応”と絶賛する声を報じていた。ところが、わずか4日後に全く同じ対応をした東京事変を今度は“無責任”“最悪”と批判している。ウイルスの何かが変わったわけでなく、我々が受け止める空気が変わってしまった」と語る。
では、どう線引きするべきなのか。神庭氏は「政府は『自粛要請』という曖昧模糊な形を取ったが、『自粛』は自分から進んで慎むこと、『要請』はお願いすることで、矛盾する要素を合わせたアクロバティックなワード。言われた側はやめることも苦渋の決断だし、やるにしてもアーティストが批判の矢面に立たなければいけない。東京事変も野田さんも、苦悩の末の決断・発信だったと思う」と指摘。
その上で、「ふわっとした『空気』に頼ったやり方はよくない。政府はできる限り法的根拠、科学的根拠に基づいてイベントを禁止した方がいいし、期間をきちんと区切ることも大切。強い制限をかける時には、どういう条件下であれば再開できるのか、出口戦略を見据えないといけない。野田さんから『演劇の死』という強い言葉が出てきたのも、出口が見えず、いつ再開できるかわからないという点が背景にあると思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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