ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」
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 新型コロナウイルス検査の保険適用が今日からスタートする。

 日本医師会の調査によれば、医師は検査が必要だと判断したにも関わらず、保健所が「重症ではない」「濃厚接触者ではない」「地域の検査能力が十分ではない」などとして検査に応じなかった事例が4日午後2時時点で39件あったといい、これまでも“検査を受けたいのに受けられない”という声がメディアで大きく報じられてきた。

ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」

 今後は医師の判断のみでの検査が可能になり、保険適用にあたって加藤勝信厚生労働大臣は「PCR検査の拡大につながるのではないか」としているが、実際のところ、検査を受けられるのは当面、体制の整った全国860の医療機関のみだ。

ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」

 厚生労働省で医療政策に携わった経験もある内科医の坂元晴香・東京大学大学院特任研究員は「現場に対応に当たる医療者たちが最も懸念しているのが、希望者が検査機関に殺到する事態だ。多くの方は季節性インフルエンザのように簡単にできると想像されているかもしれないが、実際には採取した鼻水を何重にも梱包して検査機関に届ける作業などが必要で、数時間はかかる。また、偽陰性といって、感染していたとしても100%陽性と出るわけではない。だから“ちょっと熱があるから検査して下さい”と言えばできるような簡単な検査ではないし、これまであまり行われてこなかったのも、物理的な能力の問題があったからだ」と懸念を示す。

 「今は感染者数を抑えることよりも、いかに重症者を見つけて適切な治療を施し、死亡例を減らす、そのために医療資源をいかに温存するか、という時期にきている。それは検査のための資源についても同様だ。特に若くて持病を持っていない方に関しては、厚生労働省から出ている受診の目安に照らして様子を見るということで大丈夫だと思うし、治療方法がない以上は医療機関待機なので、それは自宅待機と変わりはない。ただ、日本の医療の良いところで、皆保険制度もあって医療機関にかかりやすいので、皆さんに冷静になるよう呼びかけてみても難しい」。

ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」

 薬剤師で製薬・医療業界の問題に詳しい医療ジャーナリストの吉澤恵理氏も「薬剤師をしている知人からは、“疑い”の人が医療現場に来てしまっていると聞いた。加藤大臣の発言だけを聞くと、コスト面の負担がなくなるので検査が受けやすくなる、というイメージになると思うが、実際には検査を受けられる医療機関を増やしていってこそ広げられる」と指摘。「日々のニュースを見ていると重症化した方の話ばかりが目に付くと思うが、実際には良くなった方もいる。基本的には回復するものだし、重症者優先というところは守っていかなければならない。そうした点を国民の方に周知徹底することが大事だと思う」と訴えた。

■“日本のテレビは不安な市民を代弁して騒いでいる”

ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」

 ジャーナリスト佐々木俊尚氏は「韓国の『中央日報』を読むと、陽性と判断された人が病院に押し掛けたせいで医療崩壊状況に陥りつつあるということを踏まえ、日本やアメリカのような市中感染を前提とした、重症者中心の治療に切り替えるべきだという論を張っている。また、日本でも医師たちが投稿しているブログやTwitter、Facebookを横断的に読めば、やはり共通理解はそうなんだということが理解できる。しかし世論の分断は深刻で、そういうものを読んでいない人が多すぎる。特にテレビ業界がそうで、ワイドショーを見ていると“早く検査を受けさせろ”と言い続けている。全く専門家の意見を聞いていないのではないか」と話す。

 「心情として、“やっぱり検査して欲しい”と思う人がいるのは仕方がない。それに対して医療をいかに崩壊させないか、というバランスが大切だ。そういう状況下でメディアが果たすべき役割は、データやエビデンスに基づいて、医療を含めた科学技術と人々をブリッジし、コミュニケーションを取れるようにすることのはずだ。しかし日本のテレビは不安な市民を代弁して騒ぎ、“なぜ検査しないのか”とひたすら煽っているだけのように映る」。

ついに検査に保険適用、医療者に負担の懸念も…「不安を代弁して騒ぐのがメディアの役割なのか」「事実に基づいた報道を」

 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授も「テレビの仕事をしていいると、“冷静になって下さい”と呼びかける意味でも、ポジティブなもっと情報を出せばいいのに、なぜ深刻な情報ばかりになってしまうのかと感じている。年齢や住所などは必要ない。ただ、こういう世代の人がこういう症状になり、こうして良くなりました、という情報がなぜもっと発信されないのか。また、地上波の場合、番組ごとに出演する先生が決まっていて、“この方向で行きましょう“というものに沿って発言しているように思う。そういうものに忖度なく発言できる人や、別の角度から意見を言える人などを複数人揃えた方がいい」とコメントした。

 こうした意見を受け、坂元氏は「患者数が多い中国では7~8割の方が良くなって、日常に戻っているというデータも出てきている。ただ、そうした論文は専門性ないと読めない。だから情報を分かりやすく発信できていないという点においては医療者たちの問題もあるかもしれない。それでも1月から始まった感染症ということもあり、確固としたエビデンスが出ている領域ではないので、医療の側が断定的なことを言うのは難しい。また、重症の患者さんを診ている病院は本当にギリギリのところでやっているので、情報発信まで手が回っていない部分もある」と説明。その上で、報道機関に対しては「医療現場としては、客観的に、事実に基づいて報道してもらえると大変助かる」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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