このご時世に挑戦状を叩きつけるかのように開催されたDDTの路上プロレスinさいたまスーパーアリーナでは、多種多様な場所で闘いが展開された。なにしろ戦場はさいたまスーパーアリーナ全域。地下の駐車場から屋上、倉庫、会場入り口の広場など、いたるところで試合が実現。そのうちの一つが、ロッカールームだった。
これまでPRIDE、DREAM、K-1、UFCと格闘技のビッグイベントも開催されてきたさいたまスーパーアリーナ。そのロッカー室となると、ミルコ・クロコップやエメリヤーエンコ・ヒョードルが使った(かもしれない)場所なわけである。そこで路上プロレスが行なわれたのだから歴史的な瞬間と言ってよかった。
男色ディーノ軍と高木三四郎軍がバトルを繰り広げる中、このロッカー室で対戦したのは坂口征夫&樋口和貞&赤井沙希と吉村直巳&大石真翔&安納サオリ。坂口たちの新ユニット「Eruption」の路上プロレス初登場、樋口vs吉村の大型選手対決に加え、注目されたのは赤井と安納のマッチアップ。どちらも高い人気を誇る女子レスラーだ。
もちろん、女子だからといって控えめなところはまったくなし。試合開始直後、安納は壁のコードで赤井の首を絞め、さらにロッカーに頭を叩き込んでいく。そうかと思うとお互いイスを手に取りチャンバラを開始。路上プロレスにおいては会場備品の破損はご法度だけに、スタッフをヒヤヒヤさせる激しく無謀な闘いが続いた。赤井が安納をマッサージ用ベッドにテイクダウンし、ヒジで巧みにツボを刺激していく場面も。
おそらくこれでダメージが回復した安納だったが、DDTの勢力図を塗り替えるべく結成されたEruptionの勢いは止まらない。坂口と赤井が同時にPKを決めると大石にはダブルのハイキック。最後は樋口が大石をカナディアン・バックブリーカーで仕留めた。さまざまな名場面を生んださいたまスーパーアリーナでの路上プロレス。その中で、赤井と安納の女子対決も見事な“路上映え”を見せたのだった。
文/橋本宗洋