新型コロナウイルスによる「パンデミック」を克服するヒントは、過去にあるのかもしれない。米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長が11日「新型コロナウイルスの死亡率はおよそ1%。つまり、季節性のインフルエンザの10倍だ」と述べたように、何かと引き合いに出されるのが、今から11年前に世界で流行した新型インフルエンザだ。
7日、WHOの緊急事態対応統括担当者も「インフルエンザのように夏になれば、ウイルスが消えると期待するのは間違いだ」、日本でも9日に行われた専門家会議で「インフルエンザの場合は1人が少しずつ感染するが、新型コロナウイルスは5人のうち1人しか感染しない」と、比較対象として語られる事が多い。
当時、パンデミックを意味する「フェーズ6」が宣言された新型インフルエンザ。2009年4月に次々と感染者が発生したメキシコ市では学校を休校にしたり、イベント中止を要請したりするなどの対策を取ったものの、世界中に感染が拡大。アメリカで公衆衛生に関する緊急事態宣言が発令され、日本でも空港での検疫体制が敷かれたが、5月には国内で初めての感染者が確認された。そして、わずか2カ月後の7月には患者が3000人を突破。舛添厚生労働大臣(当時)が「本格的流行」と表現、日本中で感染への不安感が強まった。
結局、世界でおよそ1万8500人の死者を出し、日本国内でも感染者が2077万人、死者は202人に達した大流行は、翌2010年8月に「世界レベルで流行期から終息期に入った」と宣言された。
12日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した元国立感染症研究所感染症疫学センター長で、新型インフルエンザのガイドライン改定に関わる政府会議で委員を務めた経験がある大石和徳・富山県衛生研究所所長は「病気そのものに似ている部分もあるし、あのときの経験が役立つ部分はかなりあると思う」と話す。
「ただ、インフルエンザの場合はすでに抗インフルエンザ薬や迅速診断キットがあり、そのための医療の体制も整っていたので、病気も比較的軽かった。それで対策についても大きな対価を払うことはなかったし、皆さん記憶にないのではないかと思う。一方、新型コロナウイルスは未だ治療薬もワクチンもいし、感染性が高く、肺炎になる頻度も高い。感染と重症化のところのリスクは高いと言わざるを得ない。重症肺炎には有効な治療方法がなく、いわゆる人工呼吸器による補助的な治療しかできないため、結果的に亡くなるケースが出てくると十分想定できる」。
また、新型インフルエンザの場合は、パンデミックの宣言から1年2カ月後に終息宣言が出されたが、今回の新型コロナウイルスについて大石氏は「即答は難しい。最悪、年単位でパンデミックの状態が続くことも想定しておかなければならないかもしれない。2009年のパンデミックで学んだのは、地域的に異なるパターンで流行が進んだということ。北米で流行がある時にはヨーロッパで流行が下がり、しばらくすると逆になるといったことが起こった。それは国内でも同じだった。今回の新型コロナも同様の状況が起こっているのではないか」との見解を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:大石氏による解説
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