感染のスピードを遅らせて致死率を下げる狙いも懸念の声…イギリスが目指した「集団免疫」戦略の難しさ
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 新型コロナウイルスの感染が拡大、世界各国が人々の接触を減らす“封じ込め”策を講じる中、大きく方針を変えたイギリス。ボリス・ジョンソン首相は13日、「現在進めている明確な計画がある」とし、封じ込め策を諦め、“集団免疫”策に切り替える方針を示した。これは、免疫のある人たちに囲まれていれば感染リスクから守られるという発想で、ジョンソン首相は「病気のピークをより長期にわたって引き延ばし、私たちの社会がうまく対処できるようにする」と説明している。

 この集団免疫については国民の6割が感染すれば収束できるという試算があり、イギリスの人口約6600万人に当てはめると約4000万人が感染。仮に致死率が0.5%だとすれば、少なくとも約20万人が死亡することになる。このことから、今回の方針を批判する声も多く、イギリス政府は方針転換を迫られているようだ。

感染のスピードを遅らせて致死率を下げる狙いも懸念の声…イギリスが目指した「集団免疫」戦略の難しさ

 ナビタスクリニック理事長の久住英二医師は「集団免疫」について「病原体が人から人にうつっていくということは、免疫を持った人が間に挟まれば伝播が止まる。いわば“人の壁”を作り、かかったら重症化するうような人を守るという考え方だ」と説明する。

 「風疹の場合、実は日本ではこの“人の壁”がまだできあがっていらず、だいぶ世界から遅れている。また、インフルエンザについてはウイルスの性質が毎年変わるので、前の年につけた免疫が効きにくくなる。そのためワクチンを毎年作らなければならない。そしてコロナウイルスは今回の新型に限らず、普段から風邪を起こすウイルスの一つで、冬場の大人の風邪の10~15%の原因となっている。今のところ新型コロナウイルスのワクチンはないので、免疫ができた人にお任せするしかない。それでも免疫は数年で弱くなっていっていくので、再感染するが、そこで免疫がゼロになっているわけではないので、初めてかかる時よりは症状は軽く済む。だから人間界に新型コロナウイルスが定着していけば、たくさんの人が肺炎を起こすという状況にはならないだろう」と解説した。

 その上で、「封じ込めも集団免疫も、最終的に目指していることは同じで、いずれにしろ、皆がある程度は免疫を得る状態が必要になってくる。イタリアやフランスの場合、医療供給の限界を超えているので、とりあえず止めざるを得ず、その後のことはまたゆっくり考えるということだと思う。イギリスは両国に比べれば感染者の数も少ないので、出方を見ているという状況だろう。そこで、集団免疫をを数年かけてやっていくということだ。やはり社会の機能を維持し、経済も回しつつ、ハイリスクの方々を病気にさせないという点では、今までの日本のやり方ではなく、ハイリスクの高齢者や病気持ちの方を逆隔離するこのイギリスの考え方に賛成だ。20万人が亡くなると聞くとショッキングだが、もともと別の原因による肺炎死の方もいるので、20万人全てが新たに死亡するということではない」とした。

感染のスピードを遅らせて致死率を下げる狙いも懸念の声…イギリスが目指した「集団免疫」戦略の難しさ

 スローニュース代表の瀬尾傑氏は「当然のことながら、高齢者や基礎疾患を持っている方は危険なので、イギリスでは早い段階から、70歳以上の高齢者に対して自主隔離を勧めてきた。また、医療制度がかなり充実していもる。一方、イタリアではベルルスコーニ政権時代に医療費を削減したことで、そのしわ寄せがきている」と話す。

 「ボリス・ジョンソンのスピーチのうち、“死期を早める”というところが独り歩きしているが、実は直接的に集団免疫については言及しておらず、あくまで彼の科学顧問がそういう言い方をしただけだ。重要なのは、計画の中で感染のスピードを遅くすることだと言っている点だ。それによって病院の受け入れ態勢ができるので、致死率が下げられるということ。つまり、日本と同じだ。ただ、国民性というものがあると思う。日本の場合、自粛と言われると控える国民性があると思う」。

 久住氏は「ある論文では、現時点で免疫を持っているのは最大で20%くらいだろうと言われている。中国でも第二波、場合によっては第三波というものがくる可能性があるので、“終わった”と手放しで言うことはできない。幸い武漢以外での封じ込めには成功しているので、少しずつ“とろ火”で燃やした方が、免疫は得やすいのかもしれない。そこのチューニングは社会情勢によっても違う。自由民主主義国家と国家主義かで国民の権利の制限というものは全然違うので、同じことはできないと思う」と説明していた。(ANNニュース)

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