3月18日、後楽園ホールで『J STAGE』が開催された。所属選手もいるが、基本的に『J STAGE』は独立イベント。さまざまな団体、フリーから個性的な選手を招いて、他では見られないマッチメイクを実現させてきた。
『J STAGE』のJは「ジュニア」を意味する。例外もあるがジュニアヘビー級の選手を主軸とした試合が多く組まれるわけだ。最近はそこに新たな「J」も加わった。「女子プロレス」だ。独自の歴史と文化を持つ日本の女子プロレスは、海外のファンにも「Joshi」として愛されており、まさに「J」なのである。
2月の新木場大会では、ツイッターでの夏すみれのアピールに運営側が応える形で夏vs花月のシングルマッチが実現。続く今回の後楽園では、夏&山下りなvs雪妃真矢&安納サオリのタッグマッチが組まれた。女子プロレス界の第一線で活躍する選手たちが揃った、華と実力を兼ね備えた顔合わせだ。
アイスリボンのシングル王者・雪妃によると「それぞれよく飲む人で“俺得”なカードだったので楽しみでした」。安納と“雪妃魔矢”はOZアカデミーでタッグタイトルを獲得したこともある名コンビだ。ただ雪妃真矢とのタッグは久しぶりで「別人なんですけどね(笑)。一瞬、間違えそうになりました」と安納。
気心が知れているから遠慮なく闘えるということもプロレスにはある。そして仲が良くても「自分が全部持ってってやろうと思ってました」(雪妃)というのもレスラーの心がまえとして当然のこと。
(合体、連携は多くなかったが、チームとしての呼吸は抜群)
雪妃は容赦なく顔面を蹴り、山下はパワフルなエルボーとラリアット。夏は得意のブロンコバスターを両者に決める。安納は相手の攻撃に耐えつつ、体の柔らかさを活かした動きで観客を沸かせた。
試合中の雪妃が「いいよ~、女子っぽい」と安納に声を飛ばす場面もあった。今大会、他の試合はすべて男子。唯一の女子マッチだからこそ、ふだん女子プロレスの試合を見ていない観客にも“女子の魅力”をアピールしたかったということだろう。
試合は必殺技スノウトーンボムを決め、雪妃が夏に勝利。#STRONGHEARTSにガンプロ・BASARA連合軍など個性の強い選手が集まった大会で、女子レスラー4人もきっちりインパクトを残したと言っていい。安納は今年からフリーとして活動しており、3月11日のDDT・さいたまスーパーアリーナ路上プロレスにも参戦。これからさらに活躍の場を広げていくのではないか。
「もっと“どアウェー”かと思ったけど、女性の声援も聞こえてよかった」と雪妃。「凄くありがたい場でしたね。やっぱり雪妃さん最高です」とは安納のコメントだ。
こうしたシチュエーションでファンを増やすのは、女子プロレスというカテゴリー全体にとっても大きなプラスになる。“一度見たらファンになる”だけの力を持った選手が、今の女子プロレス界には数多くいるのだ。
文/橋本宗洋