「一斉臨時休業を始めた時よりも状況が改善しているわけではなく、むしろ感染者が増えている地域もある中でなぜ学校再開するのかというと、国民の皆さまの感染拡大防止に関する意識が高まっているという認識があるからです」
4月からの学校再開について、こう説明した萩生田文部科学大臣。学校の再開に向け、教室の換気を徹底し、近距離での会話をする時はマスクを使用するなど、感染拡大防止のための指針を発表した。
また、児童生徒や教職員の毎朝の検温、学校給食の実施に向けた工夫など、具体的な10項目のチェックリストが示された。一方で、「オーバーシュート」(爆発的な患者急増)が発生した場合など、感染拡大の状況によっては再び休校を要請する可能性もあるとしている。
このチェックリストについて、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「初等教育で日常的に行われている指導などあまりに汎用的で判断に困る項目が多い」として次にように指摘する。
「何より気になるのは、“3つの条件(換気の悪い密閉空間、人の密集、近距離での会話や発声)が同時に重なる場を避ける”という部分。いま初等・中等教育では、『アクティブラーニング』という議論やグループワークをするような授業形式が全教科的に導入されている。この形式ではまさに近距離での会話・発声が多くの科目で発生しうることになるが、もしこれを行わないのであればどのような教育をするのか。小学校の場合は『ルーブリック評価』といって、どういう内容でどう評価するか基準を含め事前に定めて、ある種の授業計画のもとかなり厳密に進める。このルーブリックは指導要領などを踏まえて作られるが、今の小学校・中学校の教育内容でこれら3つの条件を満たさない教育とはどのようなものなのか。それを示さなければならないはずだが、それがこの基準だけではよくわからないことも問題だ」
さらに、西田氏は新型コロナウイルスへの対策全般について3つの懸念があるという。
まず1つ目は、4月から原則としてすべて学校を再開とすることについて。西田氏は「例えば東京都では感染者がいまだに増え、小池都知事がイベント自粛の延長を呼びかけたが、学校は再開してよいのか。様々な所から相反する方向を向いたメッセージが出ている状態で、これが現場を混乱させ負担をかける一因になっている。大学もそうだ。ここでは学校の問題を取り上げているが、新型コロナに関連して様々なところで政府を中心とする行政機関のコミュニケーションの不具合が認められるのではないか」との見方を示す。
次に2つ目として、自粛要請は政治家が責任を取らない手法だと指摘。「一斉休校も法的根拠が明確ではなく、まさに政府の『要請』だった。しかしほとんどの学校で実施され、実質的に強制力がある状況に近いが、それによって生じる教育の遅れ等にどのように対応するかは各学校、各教育委員会で急いで考えることになった。日本における自粛要請は、本来責任を取るべき主体であるはずの政治が責任を取らず、法的根拠も曖昧なまま現場に判断を委ねた体にしながら、実際には政府の意にそぐわない選択肢は選び難い都合の良い手法だ」。
3つ目は、新型インフルエンザ等特別措置法を改正したことをあげ、「特措法に基づいた対応を取らないのかという最初の議論から、政府与党が法改正で対応すべきということをいい、野党はもともと同法に実際には有事法制や災害対策と比べても比較的慎重に書き込まれた『私権の制限』というわかりやすい、しかし今回の改正の本質とはズレたお題目ばかりいう批判があって、一部のメディアも中身を説明しないままにその批判に乗ったことで随分注目された。ところが、ふたを開けてみると緊急事態宣言はいまに至るまで出されておらず、改正法は成立して即施行されたのに対策本部はすぐ設置されず、ここに来てようやくという流れになっている。政府与野党、メディアそれぞれに課題が残る印象で、全般的に先送りと場当たり的な傾向が強いと感じる」と指摘した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)






