新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各地で懸念される医療崩壊。医療従事者の戦いは日々過酷さを増し、スペイン・マドリードのある病院は医療崩壊寸前の状態になっている。防護服を着た医療従事者が治療行為を行っているのは、ICU(集中治療室)などではなく廊下。廊下の至るところに患者を乗せたベッドや車椅子が置かれ、床には医療品がちらばり、周囲からは苦しそうなせきの音が聞こえてくる。
また、感染者数が10万人を超えたアメリカ。南部のルイジアナ州は世界で最も増加率が高い地域となり、27日までの感染者は2700人にのぼっている。ジャズ発症の地で知られるニューオーリンズでは感染者の増加が著しく、医療崩壊の危機が迫っているということだ。
こうした中、ハワイ在住の今村太一医師がSNSを通じ「マスク、防護服も足りず、ゴミ袋をかぶって診察する人もいるようだ。一般の人からすればこちらの救急の日常は地獄絵図そのものだろう。その地獄の住人たちが心底恐怖を感じていることをわかってほしい」と現地の悲惨な状況を訴え、「パニックになる必要はない。マスクなどの医療資源の買い占めは医療者を苦しめ、それは患者の不利益へとつながるので絶対に避けるべきだ」と警鐘を鳴らした。AbemaTV『けやきヒルズ』は今村さんに話を聞くことができた。
ハワイの状況を発信し警鐘を鳴らした理由について、今村さんは「3月に入ってから3連休で旅行に行かれた日本の方々の画像をSNSで見て、急速に収束ムードが広がっているように思えた。対照的に欧米では急速に感染が拡大し、多くの都市がいわゆるロックダウン(封鎖)の状態。この温度差に危機感を覚えて、注意喚起を促す意味でアメリカの救急室の現状を伝える投稿をした。不必要に不安を煽る結果になったら申し訳なく思う。現在は日本でも著名な方の感染がわかり、また大臣や知事が改めて喚起をしてくださったこともあって、程よい緊張感が戻ったと感じている」と話す。
今村さんが勤めるメディカルセンターは通常に近い診療ができている一方、病院の外は野戦病院のようなテントが張られるなど物々しい雰囲気だという。「先週、立て続けに重症の肺炎患者さんが運ばれては人工呼吸器に繋がれていくのを目の当たりにし、心の底から怖くなった。普段から救急室で過ごす我々は滅多に怖いと思うことはない。でもその時、まるで見えない大きな力が私たちを飲み込んでいくような感覚がした。『医療崩壊』と口で言うと簡単だが、それが実際に起こってしまうかもしれないと思った瞬間、屈強なアメリカの救急チームも縮み上がってしまったということ」と明かした。
では、日本の人々は今何をすべきなのか。今村さんは「私も日本人なので花見に行きたいのはわかるし、子どもが3人いるので学校が始まらないかなと待ち望んでいる。ただ、健康で明るい未来のために今は賢く不便さを理解する時期じゃないかと思う。外出したり遊んでいたりする人たちへ向けても、ただ批判するだけではなく彼らの問題を理解してあげて、助け合うことがウイルスと戦う上で大事なのではないか。賢いこのウイルスは人間の油断と不和を待っているように思えてならない」と警鐘を鳴らした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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