新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための“外出自粛要請”が出された直後、「食糧がなくなることはありません」という呼びかけにも関わらず、都内のスーパーではカップ麺やレトルト食品を買いだめしようとする人たちが溢れた。
そして、こうした買い占めの影で暗躍するのが“転売ヤー”たちの存在だ。特に需要が高まり品薄となったマスクを大量に買い占め、ネット上で売却する行為については政府も問題視。高額転売を禁止する政令が施行されたほどだ。
他方、「スキマ時間に手軽にできる!」として、ネットでの転売、「せどり」が大人気なのも事実で、在宅でできる副業として「せどり」を推す専門家もいる。そこで30日のAbemaTV『AbemaPrime』では、こうしたネット転売のあり方について考えた。
■「俺だったら、どんなに金があっても買わない」
「まともに働くのが好きじゃない。どうしたら金が入ってくるか考えるのが好き。言ってしまえば、血も涙もない部類に入ってしまうかもしれない。罪悪感は全くない。言ったら、“自分にどれだけの力があるか”って、日々チャレンジしているだけ。この世の中、何でも需要と供給のバランスが取れてれば別にマルなわけで、批判する人は、同じことができないから僻んでるんでしょって」。
番組の取材にそう話すのが、転売ヤーのサトウさん(仮名)だ。規制後は転売行為をやめたというが、マスクだけで200万円は稼いだという。「高額で売ると言っても1円スタートだし、そのまま1円でも10円でも、終わった金額で売るつもり。市場が値段を決めてくれるということなので、最初から10万円で売ろうというつもりもない。商品についてもマスクだけではなく、生活必需品はだいたい用意している。今回、たまたまマスクが跳ねて繁盛しましたというだけの話で。本業というか、普段はボランティア活動みたいなものをやっているので、趣味の一環、ギャンブルという感覚」。
商品は買い占めているわけではなく、“独自のルート”で仕入れていると話し、9年前の東日本大震災の時にも、水を転売して1日に80万円を儲けた。今回、自身からマスクを高額で買った人について尋ねると「バカとアホ足して“バホ”って感じ。俺だったら、どんなに金があっても買わない」とキッパリ。
■「せどりと出会って、僕の人生変わったなって」
「“せどり”というのは、いい意味での活動。お店で売れていない商品を、ネット上の適正価格に合わせて売るので、お店としてもありがたい。逆に、“転売ヤー”は世間の人に迷惑をかける」。
今回、YouTube上で「転売ヤー」のマスク転売に物申したのが、佐賀県にすむ住む優太さん(32)だ。“せどり”で稼ぐ、いわゆる“せどらー”だ。安く仕入れた商品を高く売るビジネス、転売業を生業としている。2年前までは派遣社員として工場に勤務。年収は300万円だったというが、今はAmazonを活用し年に1500万円もの利益を上げている。
「今日もお宝さがしに行ってくる」。優太さんの仕事に密着させてもらうと、行きつけだという家電量販店で、去年から製造されなくなり、市場での在庫が減少している廃盤品のゲーム機を購入した。優太さんによると、この“仕入れ価格”よりもネット上では1万円ほど高く取引されているのだという。
その後も「Amazonでの取引価格の推移」「出品者数・購入者数の推移」などを調べることのできる、月額5000円の“せどりアプリ”を使いながら、日が暮れても商品探し。合計67点を仕入れ、帰宅したのは夜10時。「楽して稼げるイメージが強いかも知れないが、仕入れは肉体労働。遅いときには日付変わるときもある」。
それでも家に帰れば1歳の息子のパパ。「子どもの面倒を見てって言われたら、気軽に時間合わせることもできるし。せどりと出会って、僕の人生変わったなって」。妻のあおいさんも「最初はどうかなと思っていたが、今の方がイキイキ仕事していると思う」と話した。
実は優太さんも、マスクを転売していたと明かす。「最初は店舗にもたくさんあったし、個数制限もかかっていなかったので。Amazonで値段が上がったので集めて販売していた。販売価格は高くて1万くらいだった。ただ、そのうちにニュースで騒がれてきたのでやめた。そこが線引きだと思っていて、その後も転売している人に関してはモラルがないと思う」。
■ネット転売を通して“社会勉強”する中学生も
優太さんのように直接お店に行って仕入れをする「店舗せどらー」に加え、最近は仕入れもネットで行う「電脳せどらー」もいる。
「スマホでテキトーにポチポチやって、商品が届いたら袋の中に入れて、コンビニとかに行って、出せばいいだけなので年間に2時間も仕事してないと思う」と話すのが、まだ中学生のあつきさん(15)だ。例えば海外のECサイトで1200円ほど(送料込み)で売られているイヤフォンが、Amazonでは3166円で出ているといった事実に注目。1年生の頃からコツコツと続け、2年間で100万を超す利益を出している。
あつきさんによると、早いうちから社会と接点を持ったことで、お金以上に大きい「夢」を得たといい、「今の時代、会社に依存してはダメ。若い起業家を育てるぞ」と意気軒昂だ。
■「転売そのものが良いか悪いかを議論すべきではない」
「blackdiamond from2000」のあおちゃんぺは「サトウさんが顔出しで出演しないということは、世間的に良くないことだとわかっているからではないのか」と疑問を呈した。3人の事例を見たカンニング竹山は、「せどり、転売すること自体が悪いことだとは思わないし、むしろ商売の基本だと思う。問題は、みんながマスクや水など、みんなが困っているもの、必要としているものをいち早く独り占めして、高値で売っていることだ」と指摘。また、幻冬舎の箕輪厚介氏は「需要のあるものの値段が高くなるのは普通のことだし、サトウさんのような人は排除しても排除しても出てくる。だから転売そのものが良いか悪いかを議論すべきではない。めちゃくちゃお金を稼いでる人なら10万円だろうが100万円だろうが払って身を守れてしまうのが資本主義だが、それでは世の中がおかしくなるし、衣食住に関わるようなもの、有事の際には国やプラットフォームが基準を設けて制限をかける。それだけの話だ」と喝破する。
経済評論家の塚崎公義氏は「この話は道徳の先生に聞くのと、経済の先生に聞くのと全く違う答えが返ってくると思う。道徳の先生は“人の弱みに付け込んで高値で売って儲けるのはけしからん”と言うだろうし、経済の先生は“高値でも買いたいという人がいれば売ってあげればいいじゃん”と言うだろう。私もどちらの立場で答えたら良いのかな、悩むところだ。たとえばマスクがないと死んでしまう人が1万円出しても欲しいと言って買うのは当然の権利だ。やはりポイントはどこまで統制するかだ。例えばマスクは統制するが、トイレットペーパーはしないという判断はどうなのか。食料品の買い占めがあった時には、それも統制するのか。経済学の先生としては、“できるだけ自由経済にしておいて、本当に必要なところだけ統制しよう”という考え方だ」と話す。
ジャーナリストの堀潤氏は「ある商社マンに、“混乱があるところに私たちの商売がある”と聞いたことがあるが、買う人いて、売る人がいる。その資本主義を誰がコントロールするかという問題はとてもむずかしい。だからといって国に規制を求めすぎるのも問題で、民間が、俺たちが踏ん張るんだと言っていられるからこそ市場を信じられる。その瀬戸際に立たされているのが現在の状況だと思う。その意味で、今回のマスクの規制が歓迎されているけれど、僕は“国に法律まで出させてしまったか”という思いがある。本当は、その手前でなんとかしなければいけないはずで、このようなことが当たり前になる社会は窮屈だ」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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