「正直涙が出る日もあるが、まだ“津波の一波”。自分を守る行動を」感染深刻なNYで働く日本人医師
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 アジアやヨーロッパ同様、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況を迎えているアメリカ。ニューヨーク州では救急病院の負担を削減するため、海軍の病院船「コンフォート」や、会議場などに作った仮設病院で感染していない入院患者の受け入れを開始するとしている。

【映像】NY在住の日本人医師が警鐘

 米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型コロナウイルスによるアメリカの死者は4000人を超え、中国の死者を上回る事態に。特に死者が多いニューヨーク州では、全米の4分の1を占める状況となっている。

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 今ニューヨークで起きていることが全米各地への警鐘であると訴えたクオモ州知事。1カ月前まで感染者すらいなかった場所が、かつての中国・武漢のような混乱に陥っている現状。そんなニューヨークで、現地のER(緊急救命室)で患者の対応にあたっている竹松舞医師がAbemaTV『けやきヒルズ』の取材に答えてくれた。

 「もちろん良くなる方も多くいらっしゃるが、重症化する患者が非常に多く、うちの病院も遺体安置室が満杯で、外の廊下にご遺体を置かざるを得ない状況。やはり怖いなと思うのは、今まで既往症がなく健康に生きてきた若い患者さんが重症化し、人工呼吸器が必要になって、不幸なことに亡くなってしまうケースをいくつも見てきたこと。インフルエンザやかぜ程度で終わるとされているが、必ずしもそうではない」

 現場の悲惨な状況をこう語る竹松さん。重症化している患者が急増している今、人工呼吸器やマスクといった医療に欠かせない機器や物資の不足に直面しているという。

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 「人工呼吸器は今のところうちの病院にはあるが、ニューヨーク全体としては足りていない。姉妹病院では数日前に最後の人工呼吸器が使われてしまった、昨日の時点で最後の1個だったという病院の報告もあり、かなり切羽詰まった状況。ひとつの病院に何百人と患者が殺到して人工呼吸器が足りなくなった時に、2人3人と分けて使う方法は無きにしもあらずだが、できればやりたくはない」

 呼吸困難な患者は人工呼吸器につなぐために気管挿管を行うが、医者にとっては感染リスクが高まる処置だという。

 「普段の触診や問診であれば普通の外科用のマスクで問題はないが、気管挿管する時は患者さんの息がエアロゾル化するので、それを直で受ける医者の感染リスクが高くなる。エアロゾルだと粒子が空気中に何時間も漂っているので、N95というしっかりしたマスクをしなければいけないが、それも足りていない状況。今は5回くらい再利用するように言われていて、使い終わったマスクをビニール袋に入れて、次の日また同じのを持ってきて使うということをやっている」

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 ニューヨークは今が感染のピークなのか。「まだだと思う。トランプ大統領がピークは2週間後だろうと言っていたが、我々もまだ“津波の一波”だという認識でいる。これから大きな波が来るのではないか」と話す竹松さん。一方で、感染拡大防止のために叫ばれている、人同士の距離を2メートル程度離そうという“ソーシャルディスタンシング”の動きにも懸念があるという。

 「個人的には、国もニューヨーク州なども早めに対応したと思うが、どうしても言うことを聞かない人は必ずいる。ハドソン川に軍の病院船『コンフォート』が来た時も、船をひと目見ようと大勢の人が駆けつけて、ソーシャルディスタンシングを一切無視して柵によじ登って見ていた。やはり危機感が足りない人がどうしても感染を広めてしまうという現実がある。若い人、健康な方はインフルエンザ程度で済むという認識で、自分は大丈夫だと思っている可能性がある」

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 ウイルスの側で働かざるを得ない毎日。家にとどまることすらできない医療従事者の不安を、竹松さんは次のように語った。

 「率直に言うと、毎日不安。何があるかわからないし、次に私が挿管する患者さんで自分がかかって、病気になるかもしれない。同僚も病気になってしまうかもしれない。やはり日々ストレスがかかって、正直涙が出る日もあるが、本当に自分ができることをやるということ。医療従事者が一番気にしているのが家族にうつさないようにすることで、自分を守ることが家族を守ることであり、普段から気をつけて生活するしかない。それでしか蔓延を防ぐことはできないので、今の時点で治療薬、これで治るというものがない以上、感染を最小化して医療の現場が崩壊しないように、自分たちにできることをやっていくということに尽きると思う。一人ひとりが感染拡大を最小限に食い止めることができれば、(全米各地が同じ事態になるような)恐ろしいことにはならないで済むと期待している」

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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