高熱、激しい咳など、新型コロナウイルスとみられる症状が出ても、PCR検査をしてもらえない―― ロンドン在住の日本人男性が、2週間に渡る闘病生活と、緊急搬送当時の様子を語った。法律事務所に務める新田麟(りん)さんは、3月中旬に38.5度を超える発熱と激しい咳、嗅覚・味覚の異常を発症。国営保険サービスのオンラインセルフチェックで7日間の自己隔離をしていたが、容態が悪化したため救急搬送。それでもPCR検査を受けられないという状況に直面した。
▶【動画】PCR検査が受けられない…医療現場の限界を見たロンドン在住の日本人男性
「僕は大丈夫だっていう過信があったので、まさか自分がっていうのは思いましたね」と振り返った新田さんだが、インフルエンザにかかったのは今から30年も前のこと。「ここまで熱が下がらないことはなかったですし、コロナなんだろなっていうのはありました。寝て起きる直前に夢と現実がオーバーラップして、自分がどこにいるかわからないような感覚」にも襲われ、普段とは異なるものだとはっきり自覚した。
発症から3日目、同居する妻の恵さんにも高熱の症状が現れたことで、新田さんは「僕がうつしたんじゃないか」という不安にもかられた。長引く体調不良でほぼ寝たきり。水分補給やチョコレートなどで栄養補給はし続けたものの「いったん誰かが家庭内で感染してしまうと、うつってしまうんじゃないかと思いますね」と語った。
妻・恵さんの症状は3日で収まったものの、新田さん本人は9日目になっても収まるどころか、胸の痛みが強くなり、ついには救急搬送に。7時間経ってようやく救急車で病院に向かえたが、そこでPCR検査を断られた。「コロナのテストはできませんと言われて、えっ?て思いましたね。診てもらった先生も全身カバーしてフェイスマスクもしていましたし、防護ギアもつけていた」と、検査なしでも「感染者」という前提で診察されたという。
医師から伝えられた言葉にも驚いた。「先生がおっしゃってたのは『家に帰って呼吸ができなくなったら戻ってきてください』。息ができなかったら相当生死をさまよう状況で、そこまでならないと診てもらえないんだっていう恐怖がありました」。医師や看護師は親身になって診察してくれたが、医療現場にはPCR検査をする余裕もベッドの空きもなかったからだ。
やむなく自宅に戻った新田さんの熱が下がったのは発症から2週間後。一番うれしかったのは、味覚が戻った瞬間だ。「家内が作ってくれたサラダを食べたんですけど、生野菜のおいしさを感じた時に、ああよかったと思いました。おいしい!って言いました。ものを食べて味を感じるって2週間以上なかったので」と、普段なら当たり前だった味を感じられる幸せを実感した。
現在は回復した新田さんだが、PCR検査を受けていない不安は、今でもつきまとう。「検査はしていただきたかった。自分がコロナかどうかわかるだけでも行動の仕方が変わります」と、回復後でもどこまで行動していいかの判断が難しい。現状では抗体ができるのか、再び発症するのかも定かではない。「今はどっちかわからない。もしかしたらまたかかるかもしれないというリスクもあるので、行動範囲は狭いままですね」。症状が収まった後も、闘病生活はまだ続いている。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶【動画】PCR検査が受けられない…医療現場の限界を見たロンドン在住の日本人男性
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側