この男の口と舌、そして発想力はどこまで回転数を高められるのか。藤森哲也五段(32)がプロ将棋界初の団体戦となった「第3回AbemaTVトーナメント」のAリーグ第2試合、チーム豊島とチーム三浦の対戦、全9局を解説。長時間の対局で解説する際も、将棋界では耳慣れないワードを巧みに使いファンを楽しませているが、この日はゲーム用語も使いこなすと、終盤には「ちょっと説明してくれませんか」と、まさかの“パス”を使うシーンまで見られた。
▶映像:藤森哲也五段が「マヌーサ」発言した三浦弘行九段VS佐々木勇気七段
細かい笑いを拾い上げればキリがないほど視聴者を盛り上げた藤森五段だが、将棋ファンの世代にもマッチした一撃を繰り出したのは、三浦弘行九段(46)と佐々木勇気七段(25)による三番勝負の第2局だ。後手の三浦九段から佐々木勇七段を惑わす一手が予想された場面で「ちょっとここは相手にマヌーサかけたいですけどね。目をくらましたい」とコメント。聞き手を務めた加藤桃子女流三段からは笑い声が漏れたが、ABEMAのコメント欄には、視聴者から一斉に「マヌーサw」といった声が寄せられた。
マヌーサとは、人気RPGシリーズ「ドラゴンクエスト」に出てくる呪文の一つで、敵を幻に包んで攻撃のミスを誘うもの。シリーズ作「ドラゴンクエストII」に初登場し、それから33年以上経過していることもあってか、視聴者の中でも知名度が高かったと見られ、マヌーサだらけの状態に「コメント欄にマヌーサで駒柱ができた」という言葉もあった。
藤森劇場はまだ止まらない。豊島将之竜王・名人(29)と本田奎五段(22)の対局では、第1局で豊島竜王・名人が飛車を打ち込んだ後に竜を作るだろう局面で「ここはどこかで龍神剣があります」とコメント。これには加藤女流三段も「龍神剣が…はい…」と対応に戸惑った。視聴者も「りゅうじんけんってなに?」という声から「竜王ですから」というものも。「龍神剣」という言葉自体は、アニメやゲームにも登場しており、竜王とかけて思いついたものと思われる。
絶“口”調だった藤森五段だが、時間切迫の難解シーンに思わず、誰かに解説の手を渡すシーンも生まれた。状況が二転三転する大熱戦となった豊島・本田の第2局。終盤、数秒で繰り広げられる勝負手の応酬に、藤森五段・加藤女流三段が「えー!?」と声を揃えたことがあった。さすがの藤森五段も、予想外の一手の意図を理解し、言葉にするのは難しかったらしく「これは何?ちょっと誰か説明してくれませんか」と口にした。ただ、これは聞き手・加藤女流三段が逃さず「それは藤森先生の役割です(笑)」と優しく咎めると、視聴者からも「かとももいいぞw」と称えられれた。
放送後には、棋士・女流棋士たちからもその語彙力を高く評価された藤森五段。実況アナウンサー顔負けの“迷”解説が、今度楽しめるのはいつだろう。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)
(ABEMA/将棋チャンネル)