新型コロナウイルスの感染拡大による物資の不足や自粛・休業要請に伴う経済的困窮を、クラウドファンディングによって支援する動きが広がっている。
サッカー日本代表の長友佑都選手や俳優の伊勢谷友介、タレントの武井壮らが賛同の声を挙げたのは、NPO法人が医療現場での不足が続くマスクを購入・支援するためのクラウドファンディングだ。多くの著名人の後押しもあり、わずか2日間で1億5000万円を集まるプロジェクトとなった。
また、俳優の斎藤工は休業を余儀なくされたことで存続が危ぶまれる全国のミニシアターを救済するため、「ミニシアター・エイド基金」に賛同。3億円を最終目標としているが、すでに1億7000万円以上が集まっている。
■「コロナでモチベーションが下がる中、励みになった」
国内最大のクラウドファンディングサイト、CAMPFIREを運営する家入一真氏は「2カ月前くらいからコロナで被害を受けている方々向けのプログラムを始めたが、すでに合計15億円くらいが集まっている。当初はイベントがなくなってしまったアーティスト、DJ、クリエイターの方々がほとんどだったが、今は飲食店、宿泊施設、クラブ、ライブハウス、生産者さんなども増えている」と話す。
「支援される方に支援したい方のお金が1円でも多く渡るべきだというのが僕らの思いなので、実は手数料を取りたくないというのが正直なところだ。今はプラットフォームを継続していく上で必要な分として12%をいただいているが、それでもまだまだ高いと思っている、できればゼロに近づけていくべきだと思っていて、今はコロナで困っている方に関しては手数料ゼロでサポートするという仕組みを提供している」。
そんなCAMPFIREには「動物カフェ」など、お店にいる動物たちの飼育管理費のサポートや、美容院に行けない方にヘアケア用品を届けるプロジェクトまで多岐にわたっている。
岐阜県の牛乳工場施設の「休校の影響で牛乳を捨てたくない!飛騨産・美味しい乳製品をたくさんの方に届けたい!」というプロジェクトで目標金額を10倍以上も上回る500万円を集めた牧成舎の牧田寛子氏は「急に学校が休みになることが決まったので、牛乳が毎日360リットルも余ってしまうことになった。どうしたらいいのだろうと悩み、いろいろな相談をしていたときに、CAMPFIREで実施して頂けると聞き、すぐに始めた。知り合いの知り合いの知り合いが…みたいな感じで広まり、ニュースにもなって、地元の飲食店で牛乳を買っていただくこともできた」と話す。
「クラウドファンディングで買っていただいた方が、またネットで購入されるということもあったし、おいしいという声を聞けるのはスタッフたちの励みにもなる。コロナの影響でモチベーションが下がっていた部分もあるので、すごくありがたい機会になった」。
■「達成しなかったら恥ずかしい、申し訳ない」を変えたい
『ABEMA Prime』の出演者の中にも、クラウドファンディングの経験者たちがいる。
2ちゃんねる創業者のひろゆき(西村博之)氏は、「PC用テレビチューナーボード」の製作・販売にチャレンジした。「3000万円くらいで作ろうと思っていたら、7000万円も集まった。そうしたら工場に“お金があるなららもっと払え”と言われて揉めた。クラウドファンディングが成功率は3割程度、ハードウェアを作るものになると1割以下だと言われているが、僕も結果的には失敗した」、テレビ朝日の渡辺瑠海アナウンサーは「学生時代に写真集を作るためのクラウドファンディングに、私はモデルとして携わった。金額は達成はできなかったが、集まった11万円を製本と撮影費に回し、作れる分だけ作った」と振り返る。
また、紗倉まなも「“おとといフライデー”というユニットの運営資金が足りず、過去2回やった。いつもクラウドファンディングを利用されている方々に私たちの活動を知ってもらうきっかけにもなり、思った以上にうまくいったと思う」と話す。また、数々のプロジェクトを手掛けてきた幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「信用をお金に変える作業。若い人にとってチャンスだと思うので、うまくいかなかったとしても、とてもいい経験になると思う」とした。
家入氏は「サクセスが目標金額を達成するという仕組みである以上、“お金が集まらなかったら恥ずかしい”として、始めるのを躊躇される方もいる。僕はそうは思わないが、“達成しなかった、申し訳ないみたい”な気持ちになってしまうことは変えていかなきゃいけないと思っている」とコメントした。
■達成のヒント「目標額を3分の1ずつに区切って考えてみる」
では、プロジェクトを達成に導くためには、どのような考え方が必要なのだろうか。個人総額では日本最多となる3億円以上を集めたキングコングの西野亮廣は、成功するプロジェクトの秘訣について「たくさんの人に見てもらうため(そのプロジェクトが)賑わっているということを演出していかなきゃいけない。もちろんプロジェクト自体がしっかりしているという告知を含め、たくさんの人にお願いするのが前提だ。その上で賑わいを見せる、つまり支援者を増やすためにはお返しの品、リターンの組み方も重要だ」と明かしている。
家入氏は「いろいろな事例があるので、そこから学ぶというのも大事だが、自分がやろうとしているプロジェクトにとって最もいい方法は何なのかを突き詰めないまま、うまくいった事例だけをコピペしてきてもうまくいかないと思う。BASEや楽天などにECショップを立ち上げて売り続けるという方法もあるとは思うが、クラウドファンディングを併用することで、何カ月かの間にこれだけの金額を集めたいんだ、という熱量を集めることができる。グッズを作って売りたい、物がいいから欲しいというだけではなくて、そこに物語があるかないか、なぜこれをやらなくてはいけないのか、という理由や必然性、思い、哲学みたいなものがなければ、なかなか説得力が生まれないと思う」と指摘。
「元々フォロワーが多い、知名度があると集まりやすいと思われがちだが全くそんなことはない。フォロワーが多くても自分がやるプロジェクトに対しての思いとか熱量みたいなものをツイッターで一切つぶやかない、語らない方は0円で終わることもある。逆に無名の小学生がたくさんの金額を集めたケースもある。僕としては、例えば、目標金額が100万円だった場合、3分の1ずつに区切って、それぞれどう集めるかを考える。最初の3分の1は身近な人たちに支援してもらい、その方々のSNSから広がっていくことで3分の2までが集まる。最後の3分の1は、クラウドファンディングをやらなければ出会わなかったような赤の他人に支援してもらう、という考えかたがいいと思っている」。
また、今後のクラウドファンディングについては、「コロナという大きな出来事があったので、消費やものづくりの形が変わっていくと思う。ただ“こういうものを作りました。皆さん買ってください”ではなく、ものを作るところからクラウドファンディングを通じて人々を味方に巻き込んでいくというスタイルが加速していくと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)











