「加藤さんは死んだ」日本各地でエスカレートする「コロナデマ」と風評被害 元気な店主の“死亡説”
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 新型コロナウイルスの感染拡大に乗じたデマが日本各地で横行、これを契機に起きた風評被害のために自主的に休業せざるを得ない店舗まで出てきている。

 愛知県瀬戸市にある「加藤スポーツ用品店」の経営者・加藤徳太郎さんがうわさに気付いたのは4月はじめ。「店を消毒していた」「防護服姿の人が消毒に入った」といった見に覚えのない話が近所一体に拡がり、後に知り合いから直接「本当か?」と連絡まで来るようになってしまった。加藤さんは「それは違う、間違いなので正しておいてくれとお願いした。最後は私がかかり、妻がかかり、最近では私が亡くなったと。びっくりしています」と語ると、今月19日には「緊急告知」と書いたチラシをレジに貼り、さらに新聞の折り込みで2000枚を配布した。結局23日には自主休業をすることになったが、憤りは収まらない。エスカレートするデマには、困惑と怒りを同時に覚えたという。

 この加藤スポーツ店から数キロ離れたコメダ珈琲店もデマによる被害を受けた。偶然にも、全面禁煙に向けてにおいを消したりする改装工事を3月30日から4日間休業して改装していたところ、新型コロナウイルスでの休業かと勘違いをされたのか、改装オープン後も客足が悪かった。「お客様からちらほらそういう話を聞くよっていうのを聞いたので、もしかしたらっていうので。やっぱり皆さんそう思われていたみたい」。

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 コメダ珈琲店の場合は実際に店を休んでいた事実もあり、勘違いというケースも想定はされるが、加藤スポーツ店の場合はデマが流れるような心当たりは一切なし。「誰も体調も悪くないし、どこからそんな話が出たんだろうって不思議でしかないですね」と首をひねるばかりだ。

 静岡県浜松市で酒を製造販売する「花の舞酒造」の社長も突然のデマに困惑した。ホームページには、風評被害についてのコメントが掲載されている。きっかけと思われるのは、「蔵がある浜松市で感染者が出たような少し報道がされた」こと。それがいつの間にか、「浜松市の酒造」にすり替わり、さらには、「はなの舞の社長が感染した」になった。

 臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、人が不安になるほど伝播しやすいデマについて、「もともと我々はコロナと戦っていて、『人対コロナ』の構造だったところが、今度は『人対人』に波及している」と表現した。

 デマが厄介なところは、その内容自体が直接感情や行動、思考に影響することに加えて、人から人へと伝播していく過程で、情報そのものが変質してしまうことだ。集団の中で知れ渡る過程では、根拠なく信じこまれたり、もとは別の話だったものが、拡散しきるころにはもっと悪質な情報になることもある。「結果的に『よくわからないけど(店には)行かないでおこう』という風評被害に結びついていくし、情報自体が全くすり替わってしまうことも稀ではない」と指摘した。

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 また、デマを流す発信者にとって「ローリスクハイリターン」であることも、数が減らない原因の一つだ。ネットの掲示板に書かれたり、匿名でSNSに発信されたりした情報も、実際に調べればデマであることはわかるが、調べることのハードルは高い。「発信者は、自分は身を隠してリスクを追わずに、思った以上に社会を騒がせられて、ハイリターンが得られる。取り締まったり、可視化したりして、ハイリスクであることを分からせる対策が必要」と求めた。

 新型コロナ関連のデマによる風評被害に遭わないための自己防衛策としては、自らこまめに明確な情報を発信すること、さらにはデマが起きる前から、感染防止の対策をしていることや、感染者が出た場合の対応などを打ち出しておくことなどを提案した。「その中で、お店や店主のキャラクターが把握されれば、例えデマが流れたとしても『直接聞いてみよう』『そんなはずはない』と正しく判断しようとする人が増えて、結果的にデマの影響を受けにくくなる」とした。

 さらに、情報を受け取る我々の心構えとして「不安なときほど、直接自分で見たり本人から聞いた情報よりも、第三者から聞いた情報のほうが信憑性が高まってしまうことがある。そのことに自覚的になるべき」と指摘した。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

▶【動画】デマの被害で自主休業も

「加藤さんが死んだ」広がるデマ
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