回を追うごとに人気が上昇している春アニメ「イエスタデイをうたって」。2002年頃の下北沢駅~松原駅周辺を舞台とした、主人公・魚住陸生(リクオ)とヒロイン・野中晴(ハル)を中心とする青春群像劇で、進みそうで進まない、切れそうで切れない、男女の思いが繊細に描かれている作品だ。登場するキャラクターは、それぞれ独自の恋愛観の持ち主で、視聴者の立場によって感情移入するポイントも変わりそうな本作。藤原佳幸監督と主人公・リクオを演じた小林親弘に、各キャラクターについての思いや「誰派か」という突っ込んだ話を聞いた。
-先行上映会では第1・2話を見たファンが絶賛し、中には涙した人も見受けられました。反応についての感想をお願いします。
藤原佳幸監督(以下、藤原) お客さんの反応がとても温かかったです。それに私が原作ファンなので、冬目景先生に認められたいというのがあって「自分の作品が拡張したようだ」という言葉もいただけたので、とてもよかったです。
小林親弘(以下、小林) めちゃくちゃよかったです。こんな素敵な作品に関われて、自分の人生じゃないみたいですね。素敵な方々とご一緒できて、前世でいいことをしていたのか、徳を積んできたのか(笑)本当にウソみたいですね。20年の歴史がある作品だからか、いろんな世代の方から「むちゃくちゃ好きだったんだよ」って連絡もいただきました。客席で1話、2話を見ていた時は、自分が演じたものだっていう実感がわかないぐらい、のめり込んでいました。
-テンポの早い作品が多い中、一歩前に進んでは、次の日に一歩下がるような、実にリアルな人間模様が描かれている作品です。
小林 この作品で難しかったのは、物語であんまりぐっと上がるところがない回がいっぱいあることでした。その日、収録に行くまでどうなるかわからないこととか結構あったので。相手がどういうことを考えているんだろうなと。思いを伝える時に噛んじゃったりするんですけど、思わずちゃんとしゃべれなくなる瞬間も、いっぱい拾ってくださっている。その場で起きて、生まれた空気感が作品の中に反映されています。
藤原 明確な変化が発生しにくい本当に繊細な部分の演技だったので、テストと本番で、「両方いいねっ!」ていうのがありましたね。作為的に作り過ぎちゃうと、問題が発生するタイトルかなと思うので、仕込みというか事前準備がすごく難しかったと思います。
-ハルの真っすぐな思いが作品の大きな柱になっています。リクオへの思いの強さは何から来ているんでしょう。
藤原 それは、このタイトル全話を通してのテーマです(笑)自分の中の答えとしては、「意地」かなと思っています。自分との向き合い方というか、何かがあるから好きなのではなく、好きになっちゃったという気持ちに対して自問自答で、これがだから好きっていうのではない。それの生き様とかも含めて、好きだから告白する、一緒にいたい、初期衝動がずっと変わらず続いていくのがハルらしさだと思います。
-ハル、品子の他にも女性キャラクターが登場します。お二人が「誰派?」と聞かれたら、どなたと答えますか。
藤原 高校生の時はハル派だったんですよ。
小林 柚原チカ派になったんですか!?(笑)
藤原 いやいや!柚原はかっこいいとは思うんですけど、彼女っていう対象ではないというか、ちょっと怖いんです(苦笑)ああいう人、いるじゃないですか。
小林 います、います(笑)めちゃめちゃリアルですよね。
藤原 個人的には、ああいう人には関わらないでおこうかと(笑)なので、やっぱりハル派ですね。ただ、作品を作っている最中に、品子の心情を把握しないといけなくて、ちょっとめんどくさい子のことをずっと考えていると、どんどん好きになっていきますね。「だから品子なんだよね」みたいな。ここが嫌なところだけど、ここも魅力なんだと。悪いところもこの子が魅力的と、そのままに受け入れられるようになっていくんです。最終的にはハル派に戻ったことは強調しますが、自分の年齢的なこともあってハルは娘を見るみたいになってますね。
小林 僕はハルの魅力も、品子の魅力も分かるし、なんなら柚原の魅力もわかるんですよ(笑)好きになっちゃう人の気持ちもわかるんです。でも、やっぱりハルかなあ。リアルに考えるなら一番かなあ。
◆作品情報「イエスタデイをうたって」とは
1998年よりビジネスジャンプ~グランドジャンプ(集英社)で連載、2015年に完結した漫画家・冬目景による漫画作品。コミックスはシリーズ累計140万部を突破。現在も多くのファンに愛されている。
◆ストーリー
大学卒業後、定職には就かずにコンビニでアルバイトをしている”リクオ”。特に目標もないまま、将来に対する焦燥感を抱えながら生きるリクオの前に、ある日、カラスを連れたミステリアスな少女―“ハル”が現れる。彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつて憧れていた同級生“品子”が東京に戻ってきたことを知る。
公式Twitter: https://twitter.com/anime_yesterday
公式サイト: https://singyesterday.com/
※品子のしなは木へんに品が正式表記
(C)冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会