「場当たり的で混乱を極めている印象」 西田亮介氏が考える、個人と中小企業向けの経済支援策
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 自民党は、新型コロナウイルスの感染拡大によって生活に影響を受けている学生を支援するため、1人10万円を検討するなどの案をまとめた。

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 自民党の案では、アルバイト収入が大きく減少するなど、修学の継続が困難になっている大学院や大学、短大、高専、専門学校の学生が対象となる。給付額は1人10万円で、特に困窮している学生に対しては20万円となり、学生が学校側に申請し審査に基づいて給付される。自民党として、実現するべく政府側に働きかけていく考えだ。

 また、1人1日あたり上限8330円の休業手当を支給する雇用調整助成金の上限引き上げも検討されているが、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「根拠が曖昧なまま場当たり的に支援策を積み上げていて、混乱を極めている印象だ。場当たり的な支援は効果不明で、将来増税などの形でツケも国民に必ず帰ってくる」との見方を示す。

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 「(支給の)対象や使い道を細かく決めると、事業者や一般の生活者にとっても使い方や申請が難しくなり、わかりにくさの一因になるし、実際既に分かりにくい。日本では、コロナ前からある支援とコロナ対策の支援を重複受給できる場合があるから、それもややこしい。例えば、引き上げ論が出ている雇用調整助成金はコロナ以前から走っている政策で、休業手当として給料の6割以上を払うことを原則に、国は8330円を上限に補助していた。もちろん企業はもっと支払ってもよいわけだ。ところが数字ばかりに注目が集まる中で、『1日8330円しか払わないのか』という誤解に基づくような指摘がなされ、議論は相当錯綜している。また、家賃支援や学生支援とカテゴリが細かくなっていっているが、学生の精査や中小企業から家賃に使うという申請をしてもらわなければならず、なぜ学生だけ支援するのか、数多の固定費の中から家賃だけ支援するのかという疑問も出てきかねないので、あまり細かな制約をつけないなかで、同時に必要性を明確にするのが好ましい」

 その上で、西田氏は個人向けと中小企業向けの2つの経済支援策を提唱する。個人向けは「生活困窮世帯と家計急変世帯限定に使途制限なしの現金支給」とし、「個人については、生活が難しくなり生存権を脅かされる人も出かねないので、現金中心に支給していくのがいいと思う。現金は使途が多様で、使い勝手が良い。支給するのは大まかに生活困窮世帯と家計急変世帯の2つくらいのカテゴリが好ましいのではないか」と話す。

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 一方、中小企業向けは「現状の無利子無担保融資とアフターコロナにおける需要不足対策」とし、「従来から景気激変期や災害復興の企業支援は、連帯保証人なしの無利子無担保融資等を基本にしてきた。日本に中小企業は多様な業種業態で400万社弱あると言われていて、そこに十分な金額を給付するとなると天文学的な数字になり、現実味を持たない。現状言われている、上限100万、200万円という金額の給付の効果は小さすぎて実際定かではない。営業の自由もあるし、公金を投入するのであればクチを挟むのも原則だけに、柔軟に多くの金額を配るためには、無利子・無担保の貸付を中心に利子補給や信用保証など補う有利な条件の貸付支援の仕組みで支援していくのが好ましいと思う。あとコロナ収束後の速やかで大規模な需要不足への対策だ」とした。

 一方で、西田氏は「今回の事業者の売り上げの減少は、国や地方自治体の直接的な過失によるものでもなく、被災者生活再建支援制度のように法的根拠が明確なわけでもない。企業にも給付措置が必要なら立法措置をとるべきではないか。国が給付するというのは従来の支援の枠組みの論理からはうまく説明できない」と指摘。また、過去の事例を引き合いに「1990年代にバブルが崩壊した後、大手企業も含めて経営危機が起きたが、国が大手企業にお金を出すことには多くの批判の声があった。国も直接給付ではなく、整理回収機構などの特殊法人を経由する形で公金を入れたが、それらも給付ではなく貸付の枠組みだった。当時、世論の評判は悪かったが大企業は再生できた。こうした議論を思い起こしつつ、中小企業支援への適用可能性など考える余地があるのではないか」と述べた。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

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