違法にアップロードされた漫画をスクショしたらどうなる? 著作権法改正案、基準の曖昧さが“萎縮効果”生む懸念も
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 20日、衆院文部科学委員会で著作権法などの一部改正案に関する質疑が行われ、参考人として出席した集英社の堀内丸恵社長が「多数の海賊版サイトが跋扈(ばっこ)し、その被害は重大かつ深刻だ。出版社や漫画家だけではなく、電子書店など正規版コンテンツの流通に関わる全ての当事者にとって今や死活問題だ」と訴えた。

・【映像】海賊版叩きでユーザーの違法DL規制 スクショは"軽微なもの"曖昧な境界とは? 著作権法改正案

 これまでは著作権者に無断で著作物をアップロードすること、そのうち映像・音楽をダウンロードすることが規制対象とされてきたが、今回の改正案では、さらに漫画や雑誌、写真、スクリーンショットなどの静止画、ゲームソフトなど、全ての著作物をダウンロードすることが対象となっている。

 ただし、「スクショの映り込み」「軽微なもの」「二次創作」などは対象から除外されているということもあり、ネットユーザーからは、「漫画の一部をスクリーンショットするのも違法?」「違法と知らずにダウンロードしちゃったらどうなるの?」「もう同人誌は作れないのか」など、疑問の声が相次いでいる。そこで20日の『ABEMA Prime』では、ネット上の著作権問題に詳しい深澤諭史弁護士に話を聞いた。

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 まず、今回の法案が成立した場合、「違法にアップロードされたもの=海賊版のダウンロード」「海賊版と知ってダウンロード」「反復・継続してダウンロード」が刑事罰の対象となるが、具体的にはどのような行為が“アウト”とみなされるのだろうか。

 深澤弁護士によれば、仮に『漫画村』にアップロードされた海賊版の『ワンピース』を「読んだ」だけであれば基本的には問題とされないが、一部をスクショ(自分の端末に保存)し、かつツイートした場合、「スクリーンショット、画面キャプチャについて、法律上はダウンロード、複製の一種と考えている。また、程度や引用のことなどを細かく言うときりがないが、基本的に配る側が違法、犯罪になる。つまりスクショをツイートする行為は新しく著作物を配って、違法に侵害するということになる」と説明、一方、一部をスクショしただけの場合や、それをアレンジした場合については、「これも程度問題、ケースバイケースだが、今度の改正法では軽微なものについては犯罪化しないという態度を取っているので、一部が軽微だといえるようなもの、個人的に見るだけのような場合は問題ないと考えられる」とした。

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 また、「ゲーム実況」についても、「ゲーム会社が作っているガイドラインに従って、その範囲で配信するのであれば、やる方も見る方も問題はない。しかしドラマが面白いからといって勝手に配信すれば犯罪になるのと同じで、本来、他人の著作物であるゲームを無断でアップロード・配信するのは原則として違法行為だ。」とした。

 また、この“軽微”の範囲について文化庁は「1話30ページの場合、1コマ~数コマは違法ではなく、15ページ(半分程度)は違法」などと例示しているものの、「形式的に決めることはできない」としている。「法律にはこういうことがたくさんあるが、まさしく形式的に決めることはできない。“1コマ~数コマ”と言っているが、例えば、最終話の最終ページが丸ごと1コマだった場合、それはアウトになる可能性が高くなってくるだろうし、逆に10コマでも、ものすごく小さなコマが並んでいるような場合はOKになるかもしれない。ゲーム実況についても、“見ている方は一部をダウンロードしているだけだから軽微だ”言われれば、確かにそうだ。“萎縮するんじゃないか”という懸念があるのも、このようにダメかどうかが分かりにくいという問題があるからだ」(深澤弁護士)。

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 こうした点を踏まえ、番組には「表現の自由が死ぬことにならないか。昔のネットには雑多で著作権無視だけど面白いコンテンツがあった」との意見も寄せられた。

 そもそも今回の改正案が動き出したのは去年2月、人気漫画を無断で掲載していた海賊版サイト「漫画村」事件に関する議論だった。しかし、改正によって権利が守られる側の出版広報センターが「既存の著作物の利用が新たな著作物の創造に寄与するという側面からは、ダウンロード違法化の対象範囲見直しがネットユーザーやクリエイターの表現行為を萎縮させるようなことがあってはなりません」との声明を出すなど、権利者側から懸念が示されたことから昨年の改正案は見送りになっていた。

 深澤弁護士も、「これで本当にクリエイターの権利が守られるのかなといえば、あまり守られない。実際問題として、萎縮効果以上のものがあるのかしらと。目的は正当だが、手段としては疑問視している」と指摘する。

 「“表現の自由が死ぬ”というのは言い方としては大げさかもしれないが、重要な指摘だと思う。表現だったとしても他人の名誉を毀損してはいけないのと同じで、著作権を侵害してはいけない。それでも“軽微ならOK”だとか、“違法だと知っていたか”など、範囲が難しい以上、“ひょっとしたら違法になるかもしれない”と恐れてしまった結果、表現の自由が制限されてしまうという問題が出てくることはあると思う。逆に言えば、不正利用者に対する萎縮効果を狙っている部分はあるかもしれない。つまり、いきなり逮捕されることはなくても、ひょっとしたらそうなるかもしれないと恐れ、違法なものを見なくなる。そうなれば、今度は違法にアップロードする人たちが、危険を冒してまでアップロードすることもなくなる。私は加害者側の弁護をすることもあるが、お金ではなく、“みんなが見てくれるから”と考えてやっている人も多い。そういう人たちが出てこなくなるという効果はあるかもしれない」。

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 ドワンゴ社長で慶應大学特別招聘教授を務める夏野剛氏は「明らかに悪意があったという人以外、実際に裁判になることはないだろうが、法律の整備が追いついてこなかった中でここまできたというのは意味があると思う。最近、学校教育でプログラミングを教えると言っているが、それ以前に、インターネットと社会、テクノロジーがどういうふうに調和していくべきなのかといったこともちゃんと入れていってほしい。LINEの使い方も大事だが、著作権の話は基本的な知識として、小学校の高学年や中学生に教えてほしい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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