(試合後はマスク着用が配信のルール。雪妃はエンディングを一人で締めた)
アイスリボンの無観客試合シリーズが、いよいよ佳境を迎えようとしている。
道場マッチのネット配信を続ける中で、アイスリボンは封印されていたIW19王座を復活させた。インターネットで配信される試合専用のタイトルだ。「19」は、かつて配信されていたネット中継『19時女子プロレス』から。
新王者決定トーナメントでは、星ハム子が先に決勝進出を決めている。1回戦、準決勝の3WAYともに19分時間切れによる視聴者投票で勝利。しかも藤本つかさ、つくしとタッグ王者コンビに連勝している。3カウントもギブアップも奪っていないが“民意”を得たわけで、これはかなりの勢いになる。ハム子自身「みんなを笑顔にしたい」とモチベーションを上げているようだ。
もう一方のブロックは、準決勝(5月23日)が雪妃真矢vs鈴季すずvsトトロさつきの3WAYになった。雪妃は団体の頂点ICE×∞の王者。すずは雪妃への挑戦が決まっている。そこに割って入る形になったのがさつき。雪妃から挑発を受けている「中堅」の選手だ。
普段は場外カウントがないアイスリボンの試合だが、このトーナメントは場外19カウント。そのルールを使って勝とうと、すずは場外戦でロープを持ち出し、雪妃とさつきを柵に縛りつけようとする。しかし逆にさつきに縛られ、身動きが取れず19カウント。まずはすずが脱落することに。
(さつきに蹴りを連打。勝負所でのたたみかけは見事だった)
試合は雪妃とさつきのシングルマッチ状態となり、ここでもさつきがベルトへの執念を発揮してみせた。今のさつきは、トップ選手でも若手でもない宙ぶらりんの状態から脱するために気合いが入りまくっている。重量級の体格を活かしたパワーファイトはインパクト充分。雪妃も余裕を見せてはいられなかった。
ただ雪妃はICE×∞のベルトを守り続ける中で、常に全力以上の力を出してくる挑戦者をはねのけてきた。さつきの奮起は目覚ましいものだったが、雪妃にとっては奮起している相手と闘うのが当たり前のことなのだ。必殺技スノウトーンボムを決めて、雪妃は決勝に駒を進めた。「今日はしんどかった」と試合後の雪妃。決勝で当たるハム子については「強敵なのは分かってるし、民意を味方につけてますよね。ファンの後押しがあると120%の力が出ますから」と警戒する。
しかし、“流れ”や“勢い”に翻弄されないのが今の雪妃真矢なのだという自負もある。
「私はずっとタイトル戦線を走り続けてきたプライドと意地と経験値があるので。それを見せつけなきゃいけない」
さらに「このトーナメントから気合いを入れ始めた人とは頑張りが違う」とも。観客がいてもいなくても、トーナメントでも普通の試合でも、雪妃は常に団体を背負い、大会の盛り上がりに責任を持ってきた。ハム子に勝てばシングル2冠。それを“つまらない”と言わせない威厳が、今の雪妃にはある。
文/橋本宗洋