DDT名物「いつでもどこでも挑戦権」が生んだ、突然のビッグカードだった。
5月23日配信のTV SHOW。KO-D無差別級のベルトを持つベテラン・田中将斗はHARASHIMAとタッグを結成し、遠藤哲哉&高尾蒼馬と対戦。若い対戦相手にまったく引けを取らないエネルギッシュな闘いで勝利している。
ZERO1から乗り込み、47歳にして全盛期とも言える状態の田中。次の防衛戦に向けて好調ぶりを見せつけたが、そこに登場したのが青木真也だった。
「いつどこ権」を保持する青木は、その場で田中への挑戦を表明、すぐに試合がスタートする。日本を代表するMMAファイターとハードコア戦法も得意とするレジェンド。海外でも名を知られた選手同士の対戦だ。少し前までなら考えられなかった顔合わせでもある。
1試合終えたばかりだけに、やはり不利なのは田中。それが「いつどこ権」の妙味でもある。青木は序盤からグラウンドで圧倒。それもキーロック、卍固め、監獄固めにコブラツイストと“プロレス式”の関節技を次々と決めていった。DDTに長く参戦、EXTREME級のベルトも巻いている青木だけにプロレスへの適応力をここでもアピールしたわけだ。
(グラウンド地獄に悲鳴をあげた田中だが一発逆転)
しかし、これが田中の爆発を引き起こすことになる。一瞬の隙を突いて必殺技スライディングD。ヒジを叩き込むと全力で抑え込み、3カウントを奪ってみせた。
青木の実力について「本物中の本物」と田中。自分とは「本物と偽物くらいの差がある」とさえ言う。しかし「卍固めやらコブラツイストを使うなら(青木は)プロレスラー。それならこっちも負けられない」。青木がMMAの世界のトップクラスでも、プロレスのリングでプロレス技を使う以上、そこは田中のフィールドなのだ。
逆転負けという形だったが、試合後の青木は「力負けだと思いますよ。アドバンテージがあったのにひっくり返された。紙一枚、二枚の差が遠い。単純に強かったですよ」と、田中の実力を認めていた。それがプロレスのリングでプロレス技を使って闘った、プロレスラーとしての実感なのだろう。
さらに田中は、こんなコメントも。
「47でこの経験ができたのはレスラー冥利に尽きる。1段階上に行けたと思うし、2年後、3年後にプロレスラーをやっていたら、その時に活きてくる」
この貪欲な姿勢こそ一流の証だ。難敵をクリアした田中には、6月7日のビッグショーでの防衛戦が待っている。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング