先週5月23日に死亡した木村花さんは、出演した「テラスハウス」での言動を巡って、インターネット上で誹謗中傷を書き込まれ、悩んでいたと見られている。これを受けて、フジテレビは27日、テラスハウスの放送を打ち切ると発表。公式サイトでは「番組に出演されていた、木村花さんがご逝去された事について、改めてお悔やみ申し上げます。またご遺族の方々にも深く哀悼の意を表します。」とコメントを出した。また、今後の収録および放送、ネット配信を中止することを決定している。
ネット上での誹謗中傷について様々に語られる中、注目が集まっているのは「プロバイダ責任制限法」だ。ポイントとして、1つは「損害賠償責任の制限」で、ウェブページなどでの情報の流通によって権利侵害が発生した場合、損害について一定の条件のもとプロバイダは賠償の責任を負わない、というもの。もう1つは「発信者情報の開示請求」で、ウェブページなどでの情報の流通によって権利侵害を受けた者は、その権利侵害を行った発信者の情報の開示を一定の条件のもとプロバイダ等に請求することができる。
高市総務大臣は、26日の記者会見で「ネット上の誹謗中傷をめぐる発信者の情報開示について発信者の特定手続きを容易にするため方策を検討することも考えている」という意向も示している。
東京工業大学准教授の西田亮介氏は「ネット上での誹謗中傷や権利侵害がよくないというのが大前提」とした上で、「プロバイダ責任制限法もそうだが、規制するルールもネットが普及してからだいぶ時間が経っている。それなりにいろいろな利害関係や、衝突する問題にも配慮して作られ、見直されていることを知るのも重要だ。変更が改悪にならないか、ということもよく考える必要がある」と、拙速な変更について注意喚起した。
たとえば、ポイントの1つ目である、プロバイダが賠償責任を問わないという免責事項については、「プロバイダは、あくまでそれらを送り届けているだけで内容に関知していないという考え方」と説明。「大まかにいえば、権利侵害の可能性があるという申し立てが行われた際、権利侵害をされた可能性がある人が、権利侵害の可能性がある書き込みを行った人と直接、交渉できる手助けをすることで免責されている」と付け加えた。
また、高市総務大臣が意向を示した情報開示については「個人情報の流出」という点について危惧した。「一見よさそうだが、申し立て段階ではあくまで可能性だがあまりに安易な申し立てが可能になれば、例えばあまりに容易に個人情報が流出してしまう懸念がある。メールアドレスや電話番号が容易に流出し、それをネットに書き込むような人も出てくるイメージだ」と指摘した。
さらには、プロバイダがクレームの対象となったアカウントをすぐに凍結するような対応を取ったり、国家がネットの内容を監視、規制するようになれば、ユーザー個人の表現の幅が狭まるといった課題もあり「ただちに厳罰化すればよい、法規制を強めるのがよいというわけでもない」とした。
痛ましい出来事により、各所で早期の対応に取り組む動きはあるものの、「ネットで世論が盛り上がると、企業や政府はそれに対応したくなる。すぐ対応するとみんな満足し政治家も支持されやすいが、その結果として表現の自由が失われたり、国家が個人を監視しやすくなるようなことにもなる。一呼吸置いて、学んだり考えてみることも大事」と、冷静さを求めていた。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)



