修斗バンタム級チャンピオン岡田遼が2Rノックアウト勝ちでの戴冠を果たした。
チャンピオンとは何か。
ある人は強さと答えるでしょう。またある人はチャンピオンにふさわしい人格と答えるかもしれません。何も難しく考えずにベルトを巻いている者がチャンピオンでいいのかもしれません。スポーツ化したMMAでは興行全体のバランスを考える選手は絶滅危惧種であろうし、多くの選手にとってメインイベントとは、その日の最終試合でしかないのかもしれません。
僕は、チャンピオンとは、メインを締めくくることにあると考えています。
その日の最後を任せられる存在であり、その日を締めてくれる人なのです。プロレス界ではオカダ・カズチカであり、清宮海斗であり、竹下幸之介だ。格闘技界で言えば那須川天心や武尊の名前がすぐに浮かんでくる。
そんなチャンピオンが修斗に誕生しました。その名も岡田遼。強くて、修斗愛に溢れて、大会を締めてくれる。そんなチャンピオンの誕生の場に居合わせたことを誇りに思います。無観客試合なのは残念でならないけれど、放送を通じて多くの人が見てくれたことが救いだし、岡田遼の名が少しでも遠くに響くようにと想いを込めて解説をして、帰宅と同時にこの原稿を書いています。
試合は勝負論のある試合でした。オールラウンダーの岡田選手に、一芸に秀でる倉本選手の構図は見る者の想像をかきたてます。蓋を開けたら、岡田選手の2Rノックアウト勝ち。試合の結果以上に勝負はどちらに転がるかわからないもので、一瞬も目が離せない手に汗握る攻防を見せてくれました。
試合のキーポイントはタイトル戦のラウンド制である「5R」でありました。普段の3R制よりも試合時間が長いので、岡田選手は倉本選手を動かせることで消耗を誘う作戦勝ちを見せましたが、倉本選手がそのまま押し切る可能性もあり、倉本選手が自ら仕掛けたからこその試合でした。
1Rも2Rも相手とケージに身体を預けて、体力を温存しつつ攻めさせて、消耗を誘う岡田選手の技量の高さには驚かされました。岡田選手は恵まれた才能がある選手ではありません。だからこそ思考することを怠らず、常に如何にして成長をするかを考え続けている選手なのです。格闘技が才能で決まるものではなく、日々の努力で決定するものだと勇気を与えてくれる勝利で、僕も明日から積み上げていく力をもらうことができました。
彼の試合から学べるのは格闘技選手だけではなく、社会で闘う人全てが何かを学べるはずです。何かを感じるはずだから、何度でも見てほしい。僕も今、何度目かの再生をしているところだ。
無観客試合。すべてのエンターテインメントが問われる中で、岡田遼が魅せてくれた。修斗にチャンピオンが誕生しました。僕は彼こそが唯一のチャンピオンだと思っています。
文/青木真也
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