5年後には宇宙旅行が現実に? イーロン・マスク氏が率いるスペースXが示したアメリカの技術力
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 日本時間の5月31日、史上初めて民間企業の有人宇宙船がISS(国際宇宙ステーション)にドッキング。アメリカとしてはスペースシャトルの退役以降、実に9年ぶりに宇宙飛行士をISSに送り込んだことになる。

・【映像】史上初の快挙 民間の有人宇宙船がISSとドッキング

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 しかも今回用いられたのは、民間企業であるスペースX社の宇宙船「クルードラゴン」(愛称は「エンデバー」)だ。同社は打ち上げたロケットの1段目を垂直着陸させて回収、再利用してコストダウンを目指している。逆噴射しながら1段目が着地する映像は大きな反響を呼んだ。イーロン・マスク氏が2002年に創業したスペースXは従業員数が6000人に上り、宇宙船の軍事打ち上げ独占に抗議するなど、アメリカの宇宙産業に競争原理を持ち込んだことで知られている。

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 宇宙開発を研究する北海道大学大学院の鈴木一人教授は「大きな快挙だ。5年後には宇宙旅行ができるかもしれない」と話す。「1段目の回収については、もう何十回も成功していて“お手の物”になっているし、ファルコンヘビーという、もう少し大きなロケットでは2本同時に回収することにも成功していて、映像を見るとSFみたいだ。そういう技術的なすごさがある。加えて、これを民間でやったということは歴史的転換になる事業だと思う。これまではNASAが月に行ってアメリカの旗を立てたように、国がやっていた。安全保障はもちろん、宇宙探査や気象予報、GPSなど、開発費をカバーできるほどの収益はあげられないものについては、国の役割があると思う。しかし低軌道、つまり地球の周りについては民間がやるということになるだろう。しかも、イーロン・マスクは南アフリカ共和国の出身だ。要するに国がどうだとかという問題でもなくなっている」。

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 マスク氏は「2022年・最初の貨物を火星に」「2024年・人を火星に」「2060年代・火星に基地を作り、100万人を火星に移住」というビジョンも掲げている。「このビジョンは大きく注目されていて、彼が講演をすると、徹夜組が出るくらい人が集まる。火星に行くための、スターライナーという新しいロケットも作っていて、イーロン・マスクだったらやるんじゃないかという期待感があるし、彼が言うと、無理に思える話も実現するんじゃないかという期待感がある。それがスペースXだけではなくて、宇宙ビジネス全体を引っ張っている」。

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 昨年には、このスペースX社の宇宙船を使って、ZOZOの前社長・前澤友作氏が月旅行を計画していることも話題となった。「宇宙に行くためには宇宙飛行士になるしか選択肢がなかったが、これからはお金持ちになれば宇宙に行ける。今回の宇宙船にはNASAも開発費用を負担しているので、7人乗りのうち、4人分の席を持っている。逆に言えば、残り3つは民間の人たちに乗ってもらうということだ。そのスキームで投資した費用を回収していく。NASAの宇宙ステーションは2025年に終了予定になっているので、その先は全て民間の富裕層が乗ることになると思う。1回打ち上げるのに約60億円かかるので、座席数で割れば10億円くらいかかることになる。しかし、やがては規模の経済が働いて、コストも下がっていくことになると思う」。

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 宇宙開発を手掛ける民間企業には、Amazonのジェフ・ベゾスCEOが設立したブルーオリジンなど、各国がしのぎを削っている。「NASAから流出した人材がスペースXなどで働いているということもあり、やはり中でも地力があるのはアメリカだ。一方、注目すべきは中国だ。国を挙げて宇宙開発を進めると同時に、非常に技術力の高い民間の宇宙産業も育てている。ハイテク分野なので、アメリカの部品を使ってはいけないなどの制約もある中、一帯一路で発展途上国に技術やサービスを提供し、影響力を強めている」。

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 翻って、日本でも堀江貴文氏が民間ロケット事業を推進している。「すでに小型ロケット打ち上げではロケットラボという会社が成功していて、今は2番手、3番手争いが熾烈になっている。“ホリエモンロケット”のインターステラテクノロジズは2番手争いに残っていて、次の5号機の実験に成功すれば2番手争いに名乗りを上げることになると思う。北海道に住んでいる私としても、北海道のフラッグシップのプロジェクトとして成功してもらいたいと思っているし、今まで全てアメリカのものだったところに民間のプロジェクトが立ち上がり、それが成功するということは、ものすごく大きな効果がある」。

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鈴木教授とともに内閣府の『宇宙産業ビジョン2030』(2018年)を取りまとめた慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「当たり前のことだが、国の事業というのは予算を節約する必要がないから無駄ばかりだ。しかし、民間は株主から資金を集め、有効に活用し、新しいビジネスを生もうとする。国が逼迫している財政の中から多額の資金を分担するのではなく、市場から知恵と投資を集めてきた民間に任せるということが必要だと思う。また、かつて宇宙技術は部品一つとっても特殊なものだったが、今は高性能のものがたくさん出ていて、いわば秋葉原の部品で衛星が作れてしまう、コモディティ化した時代になっている。アメリカではNASAがロケットを打ち上げることをやめたので、解雇された専門家や技術者をスペースXやボーイングなどが雇い、“民営化”していった。僕や鈴木さんも、そういうことを喧々諤々議論して宇宙産業ビジョン2030を作ったが、言ったことの3分の2しか入らなかった」と苦言を呈していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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史上初の快挙 民間の有人宇宙船がISSとドッキング
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スペースX打ち上げ成功 民間初のISSへの有人飛行
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