政治家とSNSの誹謗中傷の問題をどう考える? 橋下氏と三浦瑠麗氏の意見は
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 ネット上で誹謗中傷を受けていたプロレスラーの木村花さんが亡くなったことを受けて、悪質な投稿をした発信者の情報開示を容易にする制度改正に向けて総務省の有識者会議が開かれた。住所・氏名だけでなく、電話番号も開示の対象にする方針だという。6日のABEMANewsBAR橋下』で、国際政治学者の三浦瑠麗氏と橋下徹氏がこの問題について議論した。

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政治家とSNSの誹謗中傷の問題をどう考える? 橋下氏と三浦瑠麗氏の意見は
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橋下:名誉毀損の裁判を起こす場合、相手を特定しなければならない。Twitterであれば、まずTwitter社に発信者情報の開示請求をしてIPアドレスを取得する。次は携帯電話会社に問い合わせして開示してもらう。つまり、手続きが二つ必要だった。それが一発で電話番号まで教えてもらえるようになれば、弁護士会はそこから住所を調べる方法を持っているので、すぐ相手を特定して裁判が起こせるようになる。ただ、Twitter社は海外に本社があるから英文の書面も付けないといけないし、登記簿謄本を取るだけでもお金がかかる。開示請求をやるだけで、弁護士費用も併せて50万円くらいの費用がかかってしまうし、ものすごく手間暇もかかる。

三浦:民間のアクター同士の名誉棄損をめぐる裁判ならば良い気が一見するが、例えば安倍晋三さんに対する名誉毀損だとか、自分が支持している政党に対する名誉毀損だとか、そういうことで訴訟が起こせるとしたら、やはり政府や特定の政治勢力を批判した人を探り当てることができるようになってしまうことになると思う。悪用される危険はないのだろうか。

橋下:開示請求をした場合は間に裁判所が入っているし、名誉毀損や侮辱についても大体のルールができているので、これは絶対にダメだ、というラインがある。また、権力側は様々な情報発信の手段を持っているし、ある程度我慢しない部分があると思う。僕は首長の頃、それこそ出自の問題を取り上げられ、普通だったらとんでもない差別問題につながるようなことを一斉にやられたが、“権力者の立場にいるからしょうがない”と飲み込んだ。その意味では、議員、政府高官などの公職についている者、権力者側からの開示請求は認めないとか、一定の制限をかけるといったルール化もできると思う。

やはり表現の自由で大切なのは、権力者のチェック、批判ができるということだ。それがあって民主国家が成り立っているところをもうちょっと慎重に考えないといけない。みんな匿名表現はダメだと言うけれど、匿名だからこそ暴露できる真実というものもあると思う。

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三浦:ただし、匿名で誹謗中傷をするのは問題だ。どんなに被害が出ても、問題はなくならない。現に、木村花さんが亡くなったのに、相変わらず同じことをやっている。君たちは反省してないの、と思う。この社会が変わらない限り、Twitterのようなプラットフォーム側がコメントの内容を判断し、攻撃的なものについては本人に見えにくくするような処置をすべきなのではないか。

橋下:批判や悪口、誹謗中傷については、やってはいけないことだけれど、実際に何がダメで、何がダメでないか、ルールを決めるのは難しいと思うし、民間の事業者がそれを自主的にやるのはどうなのかなという面もある。大阪ではヘイトスピーチ条例を作ったが、何がヘイトスピーチに当たるのかについては審議会で議論し、認定されればホームページに公開する、というところまでが限界だった。表現の自由を規制するというのは、本当に難しいし、ワーっと規制に流れるのはむしろ危険だなと思う。

それでもトランプ大統領のツイートのような権力者の投稿に関しては、民間事業者も積極的に警告を出したり削除するということがあってもいいと思う。そういう意味ではFacebookはちょっと及び腰だったのではないか。

三浦:ただ、真実を暴こうとした政治勢力や、新しい政党を潰しかねないという問題がある。それに加えて、プラットフォームの側がトランプさんの発言に安易に警告を出したり、消したりすることによって、陰謀論はなくなるどころか加速するだろう。“やっぱりそうだった”と、陰謀論の説得力が増し、“最後のピース“がパズルにピタリとはまってしまう可能性もある。社会が二極化し、みんなが自分の世界だけしか見ていない。そこに表現の抑圧が加わることで、分断はかえって加速してしまうおそれもある。

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三浦瑠麗さんを迎えてSNSの誹謗中傷問題を考える!
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