黒人男性の暴行死を受け人種差別への抗議活動が広がるアメリカで今、ある痛ましいニュースが相次いで報告されている。「木につるされた黒人の遺体が相次いで発見されている」のだ。
CNNによると、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の保安官事務所は12日、パームデール市で、黒人男性ロバート・フラーさん(24)の遺体が木につるされた状態で発見されたと発表した。遺体は8日未明、通行人が見つけたものだという。
自殺なのか、それとも過激化する抗議デモが関係しているのか。市の検視官事務所は、フラーさんの死因については「自殺の疑いがある」との見方を示しているが、完全な検死と調査のために死因の発表は延期すると訂正した。
さらに、保安官事務所はフラーさんの遺体の近くで、同じように木につるされた状態で見つかった別の黒人男性の遺体について、地元当局が捜査を進めていると明らかにした。遺体で発見されたのは、アフリカ系アメリカ人男性のマルコム・ハーシュさん(38)。5月31日に、市立図書館とホームレス収容所の近くにある木につるされた状態で発見されたという。「詳細な死因は現在も調査中」としている。
ハーシュさんの家族は「自殺は疑わしく、犯罪に巻き込まれた可能性が高い」と訴えている。ハーシュさんの遺体が発見されたのは、先月25日に白人警察官に首を抑えられて死亡したジョージ・フロイドさんの事件が起きた後、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事)」運動の抗議者数十人が、市立図書館のあるビルに集まった日でもあった。ハーシュさんはこの抗議デモの際に起きた“集団リンチ”によって亡くなったのか、様々な憶測を呼んでいる。
アメリカで広がる人種差別への抗議活動について、作家でエッセイストの岸田奈美氏は「SNSで(デモの様子が)回ってきてニュースについて調べた時に、単なる人種差別だけではなく学歴や貧困の差別など、止められないいろいろな問題が出てきていることが日本にいても詳しく届いてきた。『私も差別を受けていた』『こういう問題がある』とSNSで話しやすい世の中になってきているように思う」との見方を示す。
岸田氏は、中学2年生の時に父親を心筋梗塞で亡くし、高校1年生の時には母親が大動脈解離による後遺症で下半身麻痺に。弟は生まれつきのダウン症で知的障害がある。これまで、車いすの母親を見たタクシーはほとんど止まってくれず、引っ越しの審査では収入面で問題はなかったものの家族に障害があるために通らないなど、いま思えば差別だと感じたこともあったという。
岸田氏は「そうした痛みに慣れてしまっていた。辛かったことや怒ったことは外に出さないとわからないこともあるんだと、このデモを通じて発信の仕方を考えさせられた」とした上で、「母も弟もきちんと収入があるのに『障害があるから収入がないだろう』とか、『黒人だからいい職に就けないだろう』といった思い込みが大きくなると、知らないうちにルールを作ったり差別に繋がってしまう。私たち自身も日常の思い込みを考え直していかないといけないと思う」と述べた。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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