“自粛明け記念”とも言える壮絶な号砲だった。6月19日、DDTの路上プロレスがスタジオ「シャトーアメーバ」で開催された。生放送中の他の番組のスタジオに乱入しながらのバトルだ。
だが、路上プロレス戦線はスタジオだけでは収まらなかった。最終決戦の場として選ばれたのは、シャトーアメーバと同じ渋谷エリアにある「CLUB HARLEM」。対戦したのは竹下幸之介&勝俣瞬馬&飯野雄貴と大仁田厚&伊藤麻希&クリス・ブルックスである。大仁田は3月の「さいたまスーパーアリーナ路上プロレス」以来の登場となる。もちろん今回も電流爆破マッチだ。
試合は序盤から大仁田が“邪道”ファイト全開。毒霧にイス攻撃、爆破バットフルスイングのフィニッシュと“カリスマ健在”をアピールした。
しかし、大仁田を囲む若い選手たちの活躍、無鉄砲ぶりも光った。飯野がステージ上でハカエルボーを決めれば、勝俣は2階からフロアめがけトペ・コンヒーロ。伊藤は竹下を巨大ラダー上から頭突きで叩き落とす。さらにそこからダイブ…と見せかけて、一回り小さいラダーからダイビング・ボディアタックを敢行した。それでもリングでの闘いではありえない危険さだ。
大仁田が勝俣と飯野をHARLEMの入口に連れ出して“リアル路上”ギリギリで闘う間、竹下と伊藤&クリスは非常階段へ。ここもほぼ“外”だが、そんな場所で伊藤が電流爆破バットを持ち出した。
かつてシングルマッチでも対戦した竹下を爆破で仕留めようと狙った伊藤だが、バットを奪われてしまう。そこに割って入ったのがクリス。伊藤とはタッグチーム「NEO伊藤リスペクト軍団」を結成しており、あくまでチームリーダーを守ろうという姿勢だ。
竹下がバットを振りかぶると、伊藤をかばって覆い被さるクリス。そのまま爆破直撃となった。しかも狭い非常階段だけに、伊藤も竹下も爆風は避けられない。結果、全員KO状態となり、試合の行方は大仁田に委ねられることに。伊藤&クリスとしては、身を挺して“大将”大仁田の出番をお膳立てした形にもなった。
初の爆破に失神し、それ以降の記憶がないという伊藤はのちに、実際の映像で状況を把握したという。ツイッターでは、自分を守ったクリスに「お前のことは忘れねえよ」と感慨深げ。また竹下には「まだ死んでないぞ」と抗争激化をアピールするツイートも。再度の爆破マッチ参戦も充分にありそうだ。
いつの間にかDDTの若手、東京女子プロレスの選手など、路上プロレスも新世代が担うようになっている。大仁田がいない場面での“非常階段爆破”は、その象徴だったと言えるだろう。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング