こんにちは。青木真也です。
6月になって徐々にではありますが、イベントが再開してきました。完全ではなくソーシャル・ディスタンスを保って、観客数限定ではあります。それでも復活の兆しであることを祈ります。人前で表現することは楽しいなんてのはありきたりの感想ですが、やっぱり楽しいです。格闘技であろうとプロレスであろうと人前に立って表現する充実感はなんとも言えません。このまま大問題が再び発生することもなく、日常が戻るといいな。もちろん何かあることは覚悟も準備もしていますけど。
イベントが開催されたら、そこには控え室が必ずあります。選手や関係者しか入れない場所で、ファン時代は覗いてみたい場所で、控え室を映した特典映像がついたVHSを迷わずに購入していました。ファン時代は関係者側にどうしても踏み込みたかったです。
ただ、ファンから関係者になったら戻れません。関係者となった今では、ファンでいる豊かさを大事にしていた方が幸せだったと思うときもあります。特典映像を楽しみにファンでいた方が幸せなことも多々あって、そちらに戻りたいです。
選手という立場になると、それはそれで大変なことも、嫌なことも、見たくないこともたくさんあるのです。好きなことができて、カネをもらえて、美人ギャルにモテて、ヒャッハーの反対側も当然存在しますからね。
とはいっても、控え室での会話が楽しいです。これは練習前後の会話も同じです、業界の真面目な話や表に出せない下世話な話まで本当に楽しいのです。上下左右の振れ幅があって控え室にいたら退屈しません。格闘技業界では面白くないとされている選手でも、こうした楽屋で会っているととりあえず面白いほど人材豊富です。
業界としては窮地なはずなのに皆底抜けに明るくて、嫌なことがあっても控え室にいくと目の前の駄話と試合やモノ創りに集中できます。嫌なことなんて何もなかったように過ごせます。僕が仕事が好きなのは嫌なことを忘れることができるからだ、というのもあるでしょう。仕事=ドラッグの側面は大いにあります。当然やり過ぎたら壊れてしまうから、ほどほどにではあります。格闘技プロレスと控え室が永遠にあるといいな。
私事ですが、7月2日に『距離思考 曖昧な関係で生きる方法』(徳間書店)を出版します。ソーシャル・ディスタンスが徹底されて人との距離感を意識することの多い時期です。物理的にも心理的にも人との距離感を意識する今にぴったりの内容になっていますのでよろしくお願いします。
映像制作の佐藤大輔さんと川尻達也さんと宇野薫さんとお仕事でご一緒しました。まさに距離思考です。毎日会っていたら命が擦り減っちゃうかは覚えておかなくっちゃ。それでは生き残りましょう。
文/青木真也(格闘家)