政府は19日、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的としたスマートフォン向けの接触確認アプリ「COCOA」の運用を開始した。COCOAはBluetooth(ブルートゥース:近接通信)機能を利用し、スマホを持っている人同士が15分以上1m以内に近づくと、相手のデータを互いに記録。例えば、ホストが感染した場合、情報を入力すると濃厚接触した客に通知がいく仕組みだ。
厚生労働省によると、21日までのアプリの登録者数は約270万人で、人口の2%程度にとどまる。はたして、感染拡大防止の効果が十分に出るとされる「人口の6割」の普及は実現できるのか。政府の有識者会議に委員として参加した藤田卓仙氏は、以前のABEMA『ABEMAヒルズ』の取材に対し、普及率が課題だとした上で次のように話している。
「例えば、韓国などでは法律に基づいてある種、強制的にアプリを使わせていて、かなりの導入率を実現している。しかし、日本の場合はそういった法律もないので、導入率を上げるためにはメリットをはっきりさせるのが一番王道だろうという話になっている。万が一、陽性者と濃厚接触したという通知が来た場合に、保健所に連絡したらPCR検査を優先的に受けられるとか、わかりやすいメリットを政策的につくることでより理解が得られたり(アプリを)入れてみようと思ってもらえるのでは」
さらに、スマホを持っていない人への対応も課題のひとつにあげた。
「スマホを持っていない方が不利益を被らないように、追加の施策を考えていく必要もあるかもしれない。子どもや高齢者で認知機能に問題がある方などの場合、本人にどこまで理解できるかが非常に難しい。どこまで理解できるかは根気強くやっていくしかない」
普及率6割という数字は「LINE」の全人口のダウンロード率(66.7%)に当たり、ハードルは高そうだ。さらに、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、「今は広まらない要件が揃っている状況」だと指摘する。
「ひとつはアプリの『情報』で、何のためにやるのか、なぜ必要なのか、中身はどうなっているのかなどが浸透していない。知っている人だけが知っている状況で、情報がありふれている中で流されていってしまう懸念がある。2つ目は、人は目に見えるリスクへの対応を優先してしまうこと。やはり、自分自身の生活の中での問題に焦点化していく発想があるので、いま『国民全体でやりましょう』と言ってもなかなかピンとこない。3つ目は、何か新しい行動を起こさせることを考えた時、インセンティブがないと基本的に人は動かない。アプリを入れることによる利益に実感が伴わず、頭ではわかっていても感情が動かない状態ではないか」
では、人が何か新たな行動をしようとする時、どのような要件が必要なのか。
「人の行動は、論理的あるいは合理的な思考によって反応しているというよりは、即時的で直感的な反応、心理学でいう“ヒューリスティック”の働きが大きい。また、“人を動かすのは人”という発想もあって、政府がトップダウンで言ってもなかなか動かず、わかりやすく言えばインフルエンサーのような存在のほうが人の心を動かすこともある。大量のマスデータがあっても、1人の意見で人の行動はひっくり返ったりするものなので、影響力のある人の呼びかけが必要。政治家も、単純に国民にインストールを呼びかけるのではなく、自分がまずインストールしインプレッションを発信するなど、自分がone to oneのメディアになるんだという意識を持つと良いのでは。また、論理的・合理的なところに働きかけてもなかなか人の新しい行動を促すことはできないので、“なんか入れたくなる”“なんかいい感じ”といったフワッと感情を動かす刺激も必要になる。そういう前提を踏まえて、具体策を考えるとよいのでは」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)






