Shuta Sueyoshiの「HACK」がTiKTokで“バズっている”と話題だ。TikTok5月度の国内再生回数は1億回突破という驚異的な数字を叩き出し、LINE MUSICランキングでも邦楽ROCK部門で1位(5月19日付け)を獲得するなど若者を中心に絶大なる支持を集めている。
「HACK」は2019年1月にリリースされたアルバム「WONDER HACK」に収録されている楽曲で、リズミカルでキャッチーなTikTok向けとも言える曲調。振り付けもかわいらしく、ついつい一緒に踊りたくなってしまうようなポップさを兼ね備えている。
しかしなぜ1年以上前にリリースされた楽曲が、いまTikTokで話題なのだろうか。ソロアーティストとして追い風が吹くこの現状をどう捉えているのか、Shutaを直撃した。
TikTokを意識し制作も予想外の反響の大きさ
「WONDER HACK」を制作するにあたり、“ライブで客席と一体になって踊ったり飛び跳ねたりできる曲が欲しいよね”という案から「HACK」を制作することになったというShuta。実はその当初からTikTokを意識して作ろうという狙いはあったのだ。
「アルバムを出した直後はファンの方の間で、TikTokに投稿してくれる動きはあったんですが、世間的にそこまで話題になっているわけではありませんでした。なので、時間はかかりましたけど、今こうやって多くの方に聴いてもらっている現状は、結果狙い通りにいってよかったと思っています」
しかし、これほどまでの広がりを見せたのは予想外だった。「自分が1番びっくりしているというのも本音です」と驚きを隠せない。
「HACK」はライブで観客と一緒に盛り上がれる曲を作ろうという構想から始まった曲。これまで自身の曲にはポップなラインが少なかったと語るShutaには、表現の幅を広げたいという思いもあったのだという。
作詞家の昆真由美さんと共作した歌詞も、あえてあまり意味を持たせない内容の歌詞に。「どこか楽観的な言葉を書き留めていったんです。それをどんどん繋げていくような作業でした。とにかく聴いてくれる人を楽しませようと、ノリのいい言葉や口ずさんでいて気持ちいいワードというのを意識しました」と制作過程を振り返る。
ライブが再開できた時の期待感
TikTokでの流行に気づいたのは人づてに聞いてから。
「TikTokで盛り上がりをみせ始めたのは、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』というアニメのゼロツーというキャラクターが、僕の『HACK』に乗せてずっとジャンプしている動画が流行したのがきっかけだと聞いています。そこからSNSを通じて『HACK』がTikTokでよく流れているよ、というのを教えてもらいました。SNSで曲が広がっていくことを実感して、そういう時代になったんだと思いました。
その後は、『鬼滅の刃』のコスプレをして『HACK』とコラボしてくれたモノがバズったと聞いています。そこからYouTuberさんやTikTokerさん、そして弾き語り演奏動画がどんどん出てきたとか。いわゆる“バズる”ことを狙ってはいたんですが、リリースからこんなに時間が経って拡散されるのはどこか不思議な感覚でもありました」
『HACK』を披露したソロライブ「Shuta Sueyoshi LIVE TOUR 2019 - WONDER HACK -」は、まだアルバムリリース直後。ファンもまだダンスが習得できておらず客席の半分程度しか一緒に踊れていなかったというが、TikTokでのブレイクを経てダンスも浸透。「ライブが再開できた時は会場中で踊ってくれるのかなという期待感はあります」と次のライブを楽しみにしている。
ファンを喜ばせたいという思いは強くなっている
新型コロナウイルス感性拡大を受けての自粛期間を経て考え方に変化も。
「大変な思いをしている医療従事者の方々に恩返しじゃないですけど、何か笑顔を作れることはないかな、と日々考えています。エンターテイメントを通じて、ファンを喜ばせたいという思いは強くなっています。
今後も様々な創作の部分を強化していきたい。自分のやりたいことを具現化して、ライブに来てくれるファンや、リスナーに楽しんでもらえるような仕掛けができたらなと思っています」
「HACK」は音楽面での新しい自分の可能性に気づかせてくれた1曲。Shuta自身もファンに習ってTikTokに動画を投稿した。Shutaは「TikTokは難しいですね(笑)。たくさんのエフェクト機能もあるし、背景を変えたり、動画をカットしたりなど編集技術が伴うモノだなと思いました。苦戦しながらも時間をかけて、なんとか投稿まで辿り着きました」と苦笑しつつも、「最近はそういう流行っているアプリなんかを積極的に使うようにしています」と視野が広がった様子。「様々なところにアンテナを張っていたら、歌詞にも反映できると思うし、きっとこれからの活動にも繋がっていくと思います」と前向きに今後の音楽活動を語っていた。
テキスト:中山洋平