コロナ禍の支持率低下で“耳を傾けすぎる政治”に? 「合理性よりも人々がどう思うかに過剰に反応」
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 東京都で9日、新たに新型コロナウイルスの感染者が224人確認され、1日としての過去最多を更新した。小池都知事は「4月17日の206人が最多だったが、その時の検査数は919件。今回は224人だが検査数は3400件で、3.4倍以上になる」との認識を示すとともに、「専門家や現場の先生から『ただ検査が増えただけではない。より注意が必要だ』と分析いただいている」と警戒感を示した。

【映像】感染者高止まり “不安”も感染?

 7月に入ってから都内の感染者数が連日100人を超えている状況について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「検査件数が大きく増えている一方、緊急事態宣言が解除される前よりも感染者数が多くなっているというデータだけを見るとやはり不安な気持ちになる。重症者が入院する病床数には余裕があるという情報が合わせて報道されないことも要因だろう。我々は感染症がこれだけ全国にわたって長い期間広がるということを経験したことがないので、どう振る舞うべきか、どう生活すればいいのかがよくわからない部分がある。不安になって当然だ」と話す。

 こうした人々の“不安”に対して、西田氏は20日発売の著書『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(朝日新聞出版)で注目したという。「社会学はこのような不安の問題と長く向き合ってきた。今回、我々はどのように不安を感じたのか、この不安を受けて政治や政策にどのような影響を与えたのかを検討した」と説明。

コロナ禍の支持率低下で“耳を傾けすぎる政治”に? 「合理性よりも人々がどう思うかに過剰に反応」
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 その上で、「不安と政治は共鳴しがちで、政治は不安を都合よく利用する」と指摘。「日本政府の対応としてよく初動が遅い、規模が小さい、後手だということが言われるが、これをよく調べていくと必ずしもそうともいえない。初期対応ほど計画通り。2009年に新型インフルエンザが全国に広がる事態があったが、その時にもいろいろな経験があって、今回のコロナ対策にも用いられている。学校休校や緊急事態宣言が発出されている期間の自粛や10年前にも同じようなことがあって、メディアも対処の計画や準備、10年前の出来事をリアルタイムでしっかり報じられていたら、もう少し違ったのではないか」と推察した。

 人が不安になった時の問題点として、合理的ではない行動を取ってしまうことがあるという。例えば、流通に問題がないにも関わらず、品物をいつもより多めに買ってしまうといったものだ。さらに西田氏は、同時期に検察庁法改正案や桜を見る会の問題などで政治不信も高まっていたと指摘。「コロナが蔓延している時期と重なって、内閣支持率がどんどん下がっていった。危機においては政治の求心力は高まっていくというのが一般的だが、ある調査によると、対象11カ国の中で日本だけ政治の求心力が下がったとされた。政治は効果や事前の計画などの合理性の観点よりも、とにかく人々がどう思っているかに過剰に反応する、耳を傾けすぎる政治・政府が生まれていたのではないか」との考えを示した。

 一方、依然コロナの影響が続く中で、今回の経験はこれからの対応にも生かすことができるとし、「過去にどんな対策が取られたのか、休業要請にどのような意味があったのか、法律の仕組みと考え方をきちんと棚卸しして説明すれば、仮に第2波が来た時に、もう少し安心感をもって振る舞うことができるかもしれない。不安を完全に消し去ることはできないが、正しく怖がることが大事だ」と述べた。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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