以前、競輪選手になるための指導や教育する施設として「日本競輪選手養成所」というものがあり、そこに入るための資格や試験についてお話しました。今回は養成所に入った後の生活についてお話しします。
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入所試験に合格したら、入所前に事前研修を受けることになります。4月中旬から下旬にかけて技能試験合格者は2泊3日、適性試験ないし特別選抜試験の合格者は14泊15日の研修です。
研修を無事に終えたら、5月上旬に入所式があり、晴れて「(選手)候補生」として入所します。授業料は無料ですが、食費や制服、ウェア代、車輪、タイヤなどの諸経費は自己負担で約120万円かかります。食費は毎月の支払い、それ以外は一括払いになるのですが、JKAから貸し付けを受けることも可能です。その場合、競輪選手とデビュー後に獲得賞金の中から源泉徴収による分割払いとなり、1年間かけて返済することになります。
ちなみに5月の入所から翌年3月に卒業するまでの間に養成所では3回の記録会が行われます。ここで良い成績を収めると報奨金やボーナスがもらえ、合わせた最高額は160万円。これで支払えてしまえる選手もいるでしょう。
養成所での1日は6:30の起床から始まります。点呼して「錬成」と呼ばれるストレッチ体操をして清掃を行い、7:30から朝食です。
9:05から午前中は学科の授業が計3時限あり、11:25から昼食。12:55から自転車を漕ぐなどの実科の授業が第4時限から第8時限まであり、17:00から入浴。17:45から夕食。19:15から自習。19:45から自由時間。21:00に点呼。22:00に消灯というのが一般的な日のスケジュールです。
月曜日から土曜日までは基本的にこのスケジュールで過ごし、日曜・祝日は終日自由時間となっています。日曜の外出は男子と女子が交互に隔週で可能(8:30~17:30)。移動は養成所のある静岡県内限定で制服着用。帰所が門限を1分でも過ぎれば退所処分を含む厳しい処罰が下されます。
寮のフロアは男子限定と女子限定に分けられていて、階段も別。食堂もエリアが別。男女間の交流は許されていません。
髪型についてはイメージ的には男子は坊主、女子は短髪にしなきゃならないと思うかもしれませんがその必要はなく、「訓練に支障がない程度」ならOKです。男子は「髪が耳に掛からない程度で、染髪せず清潔感のある髪型」。女子は「髪ゴム等でまとめられ、染髪せず生活感のある髪型」です。
携帯電話は原則使用禁止(養成所外ではOK)。公衆電話の使用は認められています。
飲酒喫煙は禁止。ドライヤーや化粧品など、不必要な私物の持ち込みも禁止です。所内には売店や飲料の自販機はあります。候補生同士で金銭の貸し借りが発覚した場合は即刻退所処分です。
この生活を候補生たちはどう思っているのか?
特別選抜で入った117期の原大智選手(平昌冬季五輪男子モーグル銅メダリスト)は候補生当時、養成所での生活について「自由な環境から一変してルールや時間に厳しい生活になって、最初のうちは戸惑い苦労がありました」としながらも「人生で一度きり、ここで頑張らないと後悔する」と思い、いつしか「時間はいつも足りないと感じていた」と述べています。
人によっては充実した1年間を過ごすことができそうです。日本競輪学校から養成所になった2019年から(117期、118期が候補生のときから)、科学的トレーニングが拡充されて、自主的にトレーニングできるようマニュアルも作成できるようになっています。やる気のある候補生にとってはかなりモチベーションが高まるでしょう。
いわゆる軍隊的な根性論で押し切る昔気質の学校というのではなく、長きに渡って活躍できる選手を作り上げる養成所。男子121期生、女子122期生の応募受付期間は7月1日(水)午前10時から8月21日(金)午後5時までです。