RISE初の無観客大会『RISE on ABEMA』(7月12日)において、那須川天心に次ぐインパクトを残したのがRISEバンタム級チャンピオンの鈴木真彦だ。鈴木はかつて那須川に敗れているが、それ以降は負けなし。なんと18連勝という圧倒的な戦績を残してきた。
今回、鈴木が対戦したのはムエタイ戦士ウィサンレック・MEIBUKAI。ムエタイの殿堂ルンピニースタジアムで2階級制覇を成し遂げた38歳のベテランだ。このウィサンレックも那須川と対戦経験があり、いわばこの一戦は“リマッチ権”をかけての闘いでもあった。また内容の比較という面も。那須川はウィサンレックにカット(負傷)で勝っているが「自分は倒して勝つ」と鈴木。那須川よりもいい勝ち方をしてアピールにつなげようという狙いだ。
タイミングよく蹴りを放ってくるウィサンレックに対し、鈴木はパンチ勝負。近い距離でアッパーを決めると、2ラウンド終盤にラッシュをかける。
さらに3ラウンド開始早々、ローキックを3連発。相手のヒザ下、ふくらはぎのあたりを狙う「カーフキック」で大ダメージを与えると、一気にパンチでたたみかけ、KO勝利をもぎ取った。
解説を担当した大沢ケンジ氏の言葉を借りれば、鈴木は「いってほしい時にいって、倒してくれる選手」。つまりファンが見たいものを見せてくれる選手だ。これで19連勝だが、数字以上に試合内容の充実ぶりが光っていた。
RISEはヒジ打ちなし、組んでの攻撃も制限されるためムエタイとは異なる闘いだが、それでもタイ人選手のテクニックや試合運びは厄介だ。やりにくさに絡め取られて本領を発揮できなかった選手は何人もいる。
鈴木も「攻めたくてもなかなか入らせてもらえなかった」とウィサンレックのうまさを語っている。試合中「判定でもいいか」と思う瞬間もあったそうだ。
それでも「最後は強引にいきました」と鈴木。それができたからこそ“打倒・天心”の最有力候補に大きく近づいた。
「(那須川を)倒せるのは僕しかいない」
堂々とそう宣言した鈴木。中継の視聴者からも、鈴木を後押しする声が多く見られた。
今後はRISEでアジアトーナメントの開催が決まっており、鈴木もまずはそこで優勝を目指す。これは那須川への挑戦者決定トーナメントでもあるが、その結果とは別に鈴木を「育てたい」と語ったのはRISEの伊藤隆代表だ。マッチメイク、大会プロデュースを通じて、半年から1年がかりで打倒・那須川の“最終兵器”に育成しようという。
国内敵なし、世界レベルでも相手がなかなか見つからない那須川を倒すのは日本人かもしれない……鈴木が、そういうロマンをかき立てる存在になってきたことは間違いない。
写真/RISE