「コロナがいつまで続くか分からない状態で、やはり将来の不安ですね。これがいつまで続くのか」
こう話すのは、京都・宇治市で約130年以上続く老舗旅館「亀石楼」で働く、金丸公大さん。世界遺産の平等院にほど近い宇治川のほとりに佇む亀石楼は、川のせせらぎとともに京都の風情を現代に残してきた。そんな歴史あるこの老舗旅館にも、新型コロナウイルスの脅威が降りかかった。
「3月、4月くらいからキャンセルが相次いで、売り上げの5%満たないくらいになってしまって。7月くらいからまた予約が結構入っている感じですね。(旅館の存続にかかわるような打撃?)そうですね、ほとんどそうです」(金丸さん)
コロナの影響により、亀石楼にも宿泊予約のキャンセルが相次いだという。しかし、130年以上続いてきた旅館の歴史を終わらせたくない――金丸さんが願いを託したのがクラウドファンディングだった。
すると、ネット上には「亀石楼クラウドファンディング、俺たちがやらなくて誰がやるんだ?」「ここでやっと作品と舞台に恩返しできる」「見過ごす訳にはいかなかった」「私も過去に聖地巡礼で1泊させていただきました。ぜひ存続のために応援します!」の声。クラウドファンディングに次々と賛同したのは、同じく京都・宇治市に本社を構える「京都アニメーション」のファンの人たちだった。
実は、京アニが2008年に制作した『CLANNNAD ~AFTER STORY~』という作品に、この亀石楼をモデルにした宿が登場。アニメファンの間で“聖地”として愛されてきた。
36人もの尊い命が奪われた、京都アニメーション放火殺人事件からまもなく1年。「京アニとともに再建を…」というアニメファンの“支援の輪”は、インターネットを通じ世界中に広がっている。
ABEMA『ABEMAヒルズ』では、支援したファンの男性に話を聞くことができた。クラウドファンディングに参加した理由について男性は、「作品の聖地になっているということで、どうしても何か助けることができないかなと思いまして。コロナの影響でいろいろなところが困っている状況の中で、何か自分でも力になれることがあるのかなと探していたところ、ちょうど興味のある作品の聖地ということだったので、少しだけ援助をさせて頂いた形です」と話す。
また、支援に対するネット上での盛り上がりについては、「素直にうれしいですね。やっぱり作品を好きになってくれている方とか、もともと作ってくれている京都アニメーションさんを支えようとか、“一丸となって”というわけじゃないけど、全く知らない人たちでもみんなで好きなものを支え合っている絆を感じた嬉しさですかね」と思いを明かしてくれた。
国内のみならず海外にも広がった支援は、目標の300万円を上回る368万円にものぼった。金丸さんは「300万円のすごい額が集まったのはだいぶ違いますね。Twitterでは『頑張って』というメッセージをもらいました。京都アニメーションのファンの方というか、亀石楼を応援してくれているというか、期待してくれている部分はあるんだろうなと。ありがたい気持ちでいっぱいです」と話している。
アニメの聖地としては、『らき☆すた』の埼玉・久喜市、『ガールズ&パンツァー』の茨城・大洗町、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』の埼玉・秩父市なども知られている。
こうしたコラボレーションについて建築家でモデルのサリー楓氏は、「アニメの世界観に入り込むことで、作品との繋がりを感じることができる。そのように、アニメの舞台になった場所が観光地になることは往々にしてあり、様々な方が訪れたりする」と評価。一方で、効果は一時的な面もあると指摘し、「一時的な経済効果しか得られない場合が多く、実際にどれだけ持続性のある取り組みかが問われている。アニメをきっかけに街が知られるのはいいことだと思うが、その先にある実際の街の暮らしぶりや観光資源などに踏み込んだ経験があると街の方も喜ぶのではないか」と話す。
また、町おこしや地方移住を促すためにアニメを取り入れるような取り組みをしているところもあるというが、「成功した事例はまだ少ない」という。さらに、インフラの“期限”に触れ、「インフラの寿命は50年程度と言われているが、日本の主要なインフラが作られ始めてからすでに48年が経過している。そういった中では、インフラを維持することが難しくなった場所は賢く畳んでいくといった工夫も必要になるだろう」と町おこしへの考えを示した。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)