第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞した名作戯曲『アルプススタンドのはしの方』の映画化が決定。7月24日から劇場公開される。スポットが当てられるのは、夏の甲子園の予選が開催されているグラウンドの選手たち……ではなく、「応援スタンド」だ。訳あって互いに妙に気を遣う演劇部員の女子2人。元野球部という微妙な立ち位置で試合を見守る男子。成績優秀だけど、友達とのコミュニケーションがうまく取れない女子生徒など。野球の試合と同時進行しながら、高校生ならではの鬱屈した心の動きが映し出される青春群像劇。元野球部員の藤野役で、今回、たった一人の男子生徒として登場した平井亜門に、作品についての思いを聞いた。
「すみません、自画自賛しています(笑)」完成作品を観て手応え
――本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、オファーがあったときのご感想から教えてください。
平井亜門(以下、平井):オファーをいただいたときから撮影までの期間が2週間くらいしかなかったんです。しかも、舞台に出演している真っ最中のときにお話をいただいて、千秋楽の次の日に、リハーサルという流れでした。さらに、ほかの出演者の子たちはすでに舞台で台本を経験済みという状況。なので、オファーがあってめちゃめちゃ嬉しい! という一方、みんなの足を引っ張ってはいけないというプレッシャーを感じました。
――不安はどのように解消しましたか。
平井:ほかのキャストが撮影してる時間や休憩時間もずっと台本を手放さずに、作品と向き合っていました。家での時間もずっと台詞を声に出して読むようにしていました。とにかく反復することで、不安を解消しました。
――ほかのキャストのみなさんはすでに舞台で共演していたということですが、平井さんだけ「はじめまして」で、すぐみんなに溶け込むことはできましたか。
平井:女の子たちはみんな10代で僕よりも年下だったんですよ。本物の女子高生。キャピキャピしていて元気で、僕のこともウェルカムという感じですぐに受け入れてくれました(笑)。役柄が高校生ということもありますが、僕も高校生に戻ったみたいな気持ちでみんなの輪に入っていったので、違和感はなかったはずです(笑)。
――平井さんご自身はきっとイケてる高校時代を過ごしたと思いますが……。
平井:(食い気味に)そんなことないです! 実は泥の高校時代だったんです。僕は工業高校出身なんですが、クラスの40人中、女子はたった1人! 校則が厳しく、オシャレもあんまりできなかったですね。授業が終わると学校の近くの古本屋で毎日、漫画を立ち読みしているような灰色の時代でした。
――なんだか意外な感じがします!ということは、今回の作品のように女子の中に男子たった一人なんていうのは……。
平井:(食い気味に)こんな状況、実際の高校時代にはあり得ないことですよ!(笑)。
――役柄に関してもお聞きしたいです。元野球部の藤野という役柄ですが、彼に共感する部分、反対に新鮮だった部分などありましたら教えてください。
平井:藤野君は、才能がある部員と自分を比べて「僕の居場所はここじゃないんだ」ってすぐに野球に見切りをつけた子なんです。その潔さは、僕とは違うなって思いました。僕は夢見がちでしつこいんですよ(笑)。共感したのは、ちょっとネガティブなところかな。努力で頑張るタイプの部員を本心では応援しているんだけど、態度ではバカにしたようなのを出しちゃう、みたいな。高校生らしいお茶目な部分、ひょうきんなところも似てるかな。
――平井さんはひょうきんなんですね!
平井:そうなんです(笑)。共通点があったから演じやすくて、結構、はまり役だったかなって思っています。完成作品を見たときに、割といいじゃん!って、自分の良さが出ているぞと感じました。すみません、自画自賛しています(笑)。
――とてもステキだと思います。見た目も、高校生だと言われても全く違和感ないですもんね。
平井:ホントですか! よかった~!
――印象的なシーンはありますか。
平井:ラストシーンは3分間をワンカットで撮影していて、かなり苦労しました。最後に僕の大切なシーンがありまして。もし失敗してしまったら、また最初から撮り直さないといけないというプレッシャーがあり、かなり自分的にエキサイトしたシーンです。
――おお、楽しみですね!これから見る人たちに見どころをお願いします。
平井:それぞれのキャラクターが、悩みとかもやもやした気持ちを抱えています。でも、最後にはスカッと気持ちよくなれる映画です。出演者の誰かに感情移入して、自分の人生を立ち返れるような物語だと思います。現役高校生にも、大人のみなさんにも、たくさんの人に見てもらいたいです!
「育子先生、ありがとうございます!」ドラ恋での経験に感謝
――我々は『ABEMA TIMES』という媒体で、『恋愛ドラマな恋がしたい』のときから、平井さんに注目しています! もし、ドラ恋での経験が役立ったことがありましたら、ぜひ教えてください。
平井:演技指導の澤田育子先生からもらったダメ出しは、その後の演技に対しての考え方を変えました。育子先生から「ワンパターン。演技の切り口がいつも同じだ」とダメだしされたことがあるんですよ。その言葉はかなり響きました。それからは、声のトーン、抑揚、表情など、基本的なことから、見えない心の動きなども幅広く、色んな自分を出せるように心がけるようになりました。育子先生、ありがとうございます!
――育子先生、ステキですよね!それでは最後に今後の野望などがありましたらぜひ。
平井:新型コロナウィルスの影響で自粛をしていた期間中、友達と一緒に動画制作をしたんですよ。それをきっかけに、自分たちでモノづくりをして世の中に発信していけたらいいなと思うようになりました。音楽も大好きなので、SNSを通して発信していこうと考えています。もちろん、俳優として映画やドラマに出演し続けていくことは1番の目標です。
――ありがとうございます! 映画も、平井さんの今後のご活躍も楽しみにしています。
テキスト:氏家裕子
写真:You Ishii
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