「高校のときを振り返ってください」と問われれば、何を思い浮かべるだろうか。

 きらきらと輝いていた自分、何もかもが上手くいかずダサかった自分、そもそもそんなものはなかったと一蹴する自分。千差万別の時間を過ごしていても、おそらくこれは共通して言えるのではないか、「やり場のない感情だけは常に抱えていた」と。7月31日(金)より公開する映画『君が世界のはじまり』は、そうしたかつての淡い記憶をふっと蘇らせてくれる。

 同作は、監督のふくだももこによる短編小説『えん』と、『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』を、脚本家の向井康介がひとつに再構築したもの。主演は、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」や auのCMシリーズなど、ここ数年で知名度が加速度的に高まっている松本穂香がつとめる。

明るい学生時代を送った金子大地の一方で松本穂香は?

 舞台は中年男性の殺人事件が発生したとある大阪の街。そこでくすぶる高校生たちの、一方通行な思いが交差していくストーリーだ。松本が演じた「えん」は、学年でも有数の成績優秀者ながらも、人には言えない秘密を抱えたまま日常を送っていた。

「最初の衣装合わせのときは『大丈夫かな』と思っていました。30歳ぐらいの役もやったことがあるので……たぶん違和感ないかなと……」(松本)

 23歳になる松本は、高校生を演じることに当初こんな感想を持っていたという。自身の高校時代と、「えん」の過ごした高校時代とでは「全然違う」と話しつつも、共感を覚える瞬間もあったようだ。

「盛り上がっている人たちを一歩引いたところから見るところは似ているかもしれません。大人数に苦手意識があったので、メインの輪にいるというよりは、仲良い子と小さい範囲で喋っているタイプでした」(松本)

 一方、東京から転向してきたクールでミステリアスな「伊尾」を演じた金子大地は、「真逆でしたね」と振り返る。

「とても明るい学生時代を送っていました。バスケ部に打ち込んでいて、キャプテンも務めていましたし、明るい人間だったかなと」(金子)

 松本は大阪、金子は北海道と、とりまく環境が大きく異なっていた高校時代。だが、未来を切り拓く上で欠かせない「共通点」があった。

「楽しい毎日を送ってはいたんですが、『このまま北海道で僕の人生終わるのかな』って考えたら、なんだか怖くなったんですよね。なので早くここを出て広い世界に行かないと、とは思っていて。当時は俳優になろうとか何で成功しようとは考えていなかったですが、“根拠のない自信”だけはずっと持っていました」(金子)

「“根拠のない自信”って、すごくわかる。私は高校時代に『女優になりたい』っていう目標ができて、そこからは他の道を考えられなかったし、失敗するっていう不安もなかった。東京で撮影しているとき、たまにふと『あれ、私なんでこんなところにいるんだろう』って思うこともあるけど、後ろ向きな気持ちにはなりませんでした」(松本)

松本穂香、演劇部で「冷凍マグロ」役に

 監督・ふくだももこ、主演・松本穂香という組み合わせは、『おいしい家族』(2019年)以来、今作が2度目。「監督と演技やセリフのことで、ああだこうだと話し合ったりして作ったのははじめての体験でした」と、松本にとって新鮮な時間だったようだ。

「私、演技をしているときは普段のキャラとは別なんですよね。何をしてもゆるされている感じがして……(釘を刺すように)だから友だちといるときとは全然違うんですよ(笑)」(松本)

 さきほども語っていたように、高校生で女優になることを決めていた松本。自然に、と言うべきか部活も演劇部に所属。そこでは“冷凍マグロ”というあまり類をみない主役をつとめた経験がある。

「大阪の学校なので、どうしても“ウケをほしがる”っていうのはありますね。いまだに人から褒められて嬉しい言葉は『面白いね』だし、仲良い子といると、結構適当なこと言ってツッコミ待ちしたり」(松本)

「現場ではまったくそんなこと感じなかったなあ。片山ちゃん(共演の片山友希。京都府出身)と話しているときは楽しげだったのに、僕と話すとサッと会話が終わってしまって……(笑)寂しかったです」(金子)

コロナ渦を乗り越える高校生に送るメッセージ

 もちろん、部活だけが青春のすべてではない。当時聴いていた音楽にも、エピソードの数々が付随してくる。

「最近、学生時代に聴いていた嵐をまた聴いています。『サイコー!』ってゆう気分になります。ドラマとか映画のサントラも好きで、一人でいる時聴いては浸っています」(金子)

「それでいったらKinKi Kidsをよく聴いてました。あとは、当時好きな人が軽音学部にいたこともあって、KANA-BOONなどのロックバンドも聴いてたり」(松本)

 つい先月まで、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国の学校が休校になり、授業・試験・部活・卒業式など、かけがえのない時間が失われていった。そんな高校生への思いとともに、二人が振り返る青春時代とは。

「甲子園も中止になってしまいましたもんね……喪失感は想像もできないぐらいですが、再開したからにはとにかく予防をしっかりして、目いっぱい遊んで思い出づくりしてほしいなと思います。振り返れば『馬鹿なことしてたなあ』ってゆうことだらけですが、大人になるとそんなこともできなくなりますもんね」(金子)

「与えられるハードルが高くなっていって、どんどん根拠のない自信も削がれていくよね(笑)。大学行ってやりたいことを見つける人も多い中、私は高校で見つかってラッキーだったなと思ってるんです。だから今のうちに、気になることはすぐ手を出しておけば、将来の選択肢が拡がるかもしれないし、とにかく好奇心旺盛でいてほしいです!」(松本)

テキスト: 東田俊介

写真:You Ishii

パッチギ!
パッチギ!
凶悪 [R15+]
凶悪 [R15+]
ピース オブ ケイク [PG12]
ピース オブ ケイク [PG12]