選手やファンとの共通見解「競輪道」とは 信頼関係で成り立つ競技性
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 「競輪道」という言葉を聞いたことはありますか?ここで言う「道」とは道徳や人道といった「モラル」の意味で、競輪の競技規則には明記されていないけど、選手として、人としてやってはいけないこと、やらなくてはならないことです。これらは選手やファンの間で共通見解、暗黙の了解、不文律となっており、「競輪道」と呼ばれています。例えば……。

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 「コメントや顔見せ(選手紹介)と異なる並びをしてはならない」

 競輪が賭けの対象となっていない競技であれば、他の選手を欺くために嘘のコメントや顔見せをして勝ったとしてもファンは「ブラフをかけやがったな」とか「はったりかましやがって」と、むしろ感心するかもしれません。

 しかし競輪は勝者投票券を買ってもらって成り立つ競技。ファンまで欺くようなコメントや顔見せまでして勝ったとしたら「騙しやがって!」とファンは憤るばかりでしょう。「お前の出るレースは二度と買うか!」と信頼を一気に失い、営業という意味でも損失を被りかねません。

 ファンが予想する上で重要な要素になるコメントや顔見せでの嘘はなしにしましょうという約束。嘘は付かないという人としてのモラルを、ここに関してはより一層強く持ちましょう……という暗黙の了解です。車券を買う、車券を買ってもらうという関係においての信用事項。それが選手とファンの間の「競輪道」になります。

 「コメントや顔見せ(選手紹介)で番手競りを表明したら、必ず一度は競りにいかなければならない」

 これも選手とファンの間の「競輪道」になります。とにかく嘘は付かないということが大事。

 一方、選手間での「競輪道」は「持ちつ持たれつの関係を大切にしよう」といった事項がメインとなります。例えば……。

 「先行するラインの番手は後ろから捲ってくる選手をけん制しなければならない」

 ラインの番手は先行する選手を風よけにしているのだから、代わりに後ろから来る選手をブロックする役目を負いなさいということです。持ちつ持たれつの関係維持。3番手の選手はというと……。

 「先行するラインの3番手は内を締めてインを突かれるのを防いだ上、自らもインを突くような真似をしない」

 2番手の選手が捲りに来る選手をブロックしている合間に内が空いたからと3番手の選手がインを突いてきたら、どう思いますか? 2番手の選手はラインを勝たせるため、捲らせないように仕事をしているのに、出し抜いて着を拾いに行っている。持ちつ持たれつの関係だったラインというチームの裏切り者になってしまうわけです。

選手やファンとの共通見解「競輪道」とは 信頼関係で成り立つ競技性
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 もちろん、競輪は個人競技。各々が勝利を目指して全力で走っている。しかし、全員が単騎でスタートからゴールまで全力疾走するよりも、何人かで組んで役割分担しながらゴールを目指したほうが勝率が高まるということでラインという形式ができたのであって、その中での信頼関係を損なうような行為があってはならないのは当然でしょう。

 「ラインで決めよう」という共通意識でレースを進めていく上で、必要不可欠なのが「競輪道」。だから……。

 「先行するラインの番手、3番手が勝負を仕掛けるのは最後の直線に入ってから」

 個々の勝負になるのは最後の直線から。それまでは最終コーナーをトップで入るという同じ目的を持った同志なのだから、持ちつ持たれつの信頼関係を維持しようというのが選手間の「競輪道」なのです。

 では実際に全員が全員、「競輪道」を厳密に守っているのかというと、それはなかなか難しいところではないでしょうか。同県同地区であればきっちりしていると思いますが、繋がりの薄いラインでは表面上守っているようで、結果として出し抜いてしまうこともあるでしょう。

 これは人間社会と同じで、すべての人がすべての人に対して同等のモラルを持てるのかどうか……。「競輪道」を踏まえた上での展開予想は、さらに豊かに、深みのあるものとなるのです。

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