断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー
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 豪雨災害の爪痕が残る熊本県。復旧作業にあたり、避難所生活を余儀なくされている地元住民の脅威になっているのが、新型コロナウイルスを始めとした感染症の問題だ。

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 広島大学の久保達彦教授(公衆衛生学)は「お風呂に入れない、手を洗えない、食事を加熱できない、といった衛生環境の中で感染症の問題が大きくなってくることが、熊本地震などの災害で観察されている」と話す。

 こうした問題の解決にAIを用いた水循環テクノロジーで挑むのが、東大発ベンチャーのWOTA(ウォータ)株式会社だ。汚れの成分を分析、最適な浄水処理を施すことで、実に98%の水が再利用可能になるという。22日の『ABEMA Prime』では、同社の前田瑶介代表に話を聞いた。

■断水状態が続くエリアでも入浴支援が可能に

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 今月11日、道路や橋の崩壊によって復旧が遅れ、断水状態が続いていた熊本県八代市の避難所に同社のWOTABOXを用いたシャワーブースが設置された。入浴が1週間できなかったという住民たちからは、「気持ちよかった」「大変助かった」と笑顔が溢れる。

 新潟中越地震(2004年)における被災者のニーズを調べたアンケートでは、「1位入浴、2位睡眠、3位トイレ」となっており、福島大学による「避難所における生活環境の問題とストレスとの関係」調査でも、「1位トイレ、2位入浴、3位プライバシーの保護」となっている。災害や紛争時の避難所について国際赤十字が提唱している「スフィア基準」には、「1人1日最低15リットルの水を使用できる」という項目もある。

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 「手以外の肌や髪を清潔にしておかないと、様々な感染症のリスクにつながる。我々の技術を使って、避難所でも水に困らない状況を作れればと思っている」(WOTAの割田聖洋氏)。

 通常、100リットルでは2人がシャワーを浴びる程度の水量だが、WOTABOXを使えば、約100人が利用できるのだという。これまで被災地では自衛隊による入浴支援が行われてきたが、どうしても大量の水が必要になるため、派遣先は限られていた。しかし、この装置を使えば、断水した地域でも少量の水で入浴支援が行えるようになるのだ。

■“口に入っても大丈夫なレベル”まで浄水

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 こうしたWOTAのテクノロジーについて、前田氏は次のように説明する。

 「たとえば下水処理場では微生物を使って汚れを分解しているが、その微生物の状態を良好に保っておかなければ、分解効率が下がってしまうので、職人さんがタンクの泡の出方や色などで判断している。いわば職人さんの経験と勘に基づいて、微生物のコミュニティーマネージメントをしているということだ。我々は職人さんの目や鼻の代わりにセンサーを使って情報を集め、職人さんが経験則に基づいて判断する部分を機械学習で数理モデル化することによって、どんな所でも最適な水処理ができるようにしている」。

 また、ブレークスルーの秘密は、そのセンサーにあるという。「水処理場で使われているセンサーは1つ数十万円するほど高価だが、我々は安いセンサーを使えるようにチャレンジした。世界的にもあまりない取り組みだ」。

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 これまでにも様々な被災地で入浴支援を行いながら改良を重ね、昨年には製品化にも成功。鎌倉市など、自治体への導入実績もあり、海外からの問い合わせも相次いでいるという。

 「この製品が1万台のオーダーで日本に存在するようになれば、どんな災害が起きたとしても、それまでと変わりなく水が使える状況が実現できる可能性がある。2050年時点で世界人口の40%が水に困ると言われているので、長期でリクープする部分と、短期でリクープする部分のバランスを取っていく」(前田氏)。

■孫泰蔵氏や本田圭佑氏も期待

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 「人と水の、あらゆる制約をなくす」をビジョンに、東大のメンバーが中心となって2014年に立ち上げられたWOTA株式会社。徳島県出身の前田氏は建築学を専攻、東京大学総長賞も受賞した。在学中から大手住設メーカーのIoT型水回りシステムユニットの開発プロジェクトに参加。チームラボのエンジニアなどを経て、WOTAには2017年に参画した。

 「上京したのが3.11の前日だった。一気に都市インフラが使えなくなった。僕の地元は田舎なので、仮に水道が止まったとしても、どこの川の水が飲めるかが分かっているので困らない。しかし都市インフラが高度に発達した結果、一般の方々が使えない理由すら全く分からない状況になっていることに非常に違和感を覚えた」。

 現在は、元NASAや大手メーカー出身の技術者など、多国籍の30名からなり、従業員の平均年齢は40歳だという。出資者には本田圭佑氏や孫泰蔵氏の名前もあり、本田氏は「多くの人の生活レベルが向上すると信じている」と、同社の技術に期待を寄せる。

■手洗いニーズに合わせた商品開発も

断水した被災地の入浴支援やコロナ対策の“手洗い”ニーズに大活躍! “持ち運べる浄水場”を開発した東大発ベンチャー

 新型コロナウイルスの感染拡大により、習慣のなかった国でも注目され始めている“手洗い”。WOTAも、仮設トイレに併設するための試作品を応用、“水道いらずの手洗い機”「WOSH」を開発した。

 ドラム缶の形をした筐体AIと、流されたウイルスなども除去できる濾過装置が搭載され、20リットルの水で500回の手洗いができるという。また、水循環で使っている紫外線殺菌を利用し、手を洗っている間にスマホも殺菌できてしまう。トイレの便器よりも雑菌がいると言われるスマホだが、これを使えば99.9%の殺菌ができるという。

 「この小さなボディの中に、最先端の浄水場やプラントレベルの高度な水循環処理が詰まっている。我々の実験値では、水道水よりも不純物が少ない状態で水が出てくる」(前田氏)。

 月額2.2万円のサブスクリプションモデルで、11月からの出荷に向け、11月からの出荷に向け、現在先行予約を受付中の「WOSH」。日本だけでなく、世界のグローバル企業からも問合せが入り、来年にはアメリカマーケットで出荷を開始する予定だという。「世界で30億人ぐらいの人たちが手洗い設備のない地域で生活している。最終的には、基本的な感染症対策ができていない地域の方々に届けたい」(前田氏)。

■砂漠でも生活できる時代に?

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 前田氏は、各家庭に自律分散型の水循環システムが行き渡ることで、「お風呂の場所を家具のように変えられる」と話す。

 「例えばテスラが家庭で自律分散的に発電できる状態を作っているように、ライフラインの世界はどんどん小さくなっている。しかし、水だけがそうなっていない。水さえ何とかなれば、砂漠の中でも近代的な生活ができる。例えばオリンピックが開催されると、人が一気に集まることによって、水の需要も増大する。しかし、都市は変わらない。それが、人に合わせて水インフラの場所が変わるという状態が作れるんじゃないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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