7月29日に岩手県で初めて新型コロナウイルスの感染が確認された40代の男性に対し、インターネット上で誹謗・中傷が相次いでいる。
「危機管理できていない馬鹿が」
「この時期関東行くとか馬鹿じゃねーの マジでありえん帰ってくんじゃねーよ」
かねてから「感染することは“悪”ではない」と強調してきた岩手県の達増知事。7月31日の会見では、「誹謗・中傷は犯罪にあたる場合があるので、そこには厳格に臨むという意味で“鬼になる必要性”もあるかもしれない」との強い意思を示した。
知事の呼びかけにもかかわらずなぜバッシングは起きたのか。その心理背景について、明星大学准教授で心理学者の藤井靖氏は次の2点を指摘する。
「1つは、感染者ゼロ神話の崩壊。岩手県はこれまで感染者が出ていなかったが、無症状の人や発症していても検査を受けていなかった人がいた可能性がある。もし『感染者はいなかったのに』と思い込んでいるとしたら、それは実態としては確実ではない神話的な話ともいえるが、一部の人の中にある「ゼロ」という最高の結果を守ってきたという自負が、今回感染者が出たことで崩壊し、感情的な反動が行動に現れてしまったのではないか。
もう1つは、集団帰属意識の暴走。特にコロナ予防や対策に関して、ウイルスの伝播に県境の区切りがあるわけではないにも関わらず、日本の中で都道府県をベースにしたり基準に考えすぎているところがある。岩手の隣県ではすでに感染者が出ているわけで、容易に行き来が可能な少し離れたところで出ているのに、都道府県という帰属意識が強すぎるが故に『県内』というワードに過剰に反応してしまう。そこから『何で県外に出ていったんだ』という反応も起こってくる」
一方で、県内で初めて感染者が確認された効果もあるといい、「自分の身近に感染者が出るというのは、一気に自分事になるということ。そのため、岩手県の人の心理アラートは今最高レベルに近づいていると言っていいのではないか。結果として予防意識がさらに高まることにつながる面はあると思う」とした。
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