累計発行部数555万部突破の青春ダイビングコメディ漫画を原作にした映画『ぐらんぶる』が、8月7日に公開される。俳優の竜星涼と“W全裸主演”を務めたのが、テレビ朝日系特撮ドラマ『仮面ライダービルド』で一躍注目を集めた俳優の犬飼貴丈だ。
竜星とともに本編の至る所で裸体をさらし、下半身にモザイク処理を施される衝撃的場面にも挑んだ。第25回ジュノンボーイグランプリという肩書きをかなぐり捨てたかのような体当たりぶり。しかし犬飼本人としては、裸になること以上に高いハードルがあったという。全裸以上に困難なものとは一体!?
演じたのは、無駄にイケメンなアニメオタクの大学1年生・今村耕平。自分を中心とした女子高生美少女サークルがないことを真剣に悩むド変態で、北原伊織(竜星)と一緒にダイビングサークル・ピーカーブーに半ば強制的に入部する羽目になり、マッチョな先輩にもみくちゃにされながらもダイビングの魅力に気づく。
屈強な男たちとサークルメンバーの愛菜(石川恋)を取り囲むようにビーチを走る場面では、犬飼を含む男性陣全員の下半身にモザイク処理が施された。犬飼は「幸か不幸か、人生初モザイク。今までの映画史上、画面に対してのモザイク量の比率が高い作品だと思います。半裸の男性陣に囲まれる石川恋さんは悲鳴を上げていましたが、男子の気持ちは結束していました」と胸を張る。
英勉監督からは“これが一番撮りたかったシーンだ!”と聞かされていたそうで「それだけに天候なども含めて、撮影するまでにかなり粘りました。僕の中でも印象深いシーンの一つです」と爆笑的行為とは裏腹に真剣そのものだ。
「バモスッ!」といきなり叫んで屈強な男たちと異様なテンションで踊りだすダンス場面も、コミカルな設定とは一転して緻密に計算して演出されたもの。クランクインの1ヶ月前から動きを体に叩き込んだ。「動きの速度や振り付けが一人でもズレると見栄えが悪くなる。自分のポジションや周りの状況を把握しながら、高いテンションを維持しなければいけない」と難しい撮影となったが「現場の雰囲気として、真面目なところは真面目にやり、ふざけるところは思いきりふざけるようなメリハリがしっかりあったので、テイクを重ねることなくOKが出た」と達成感がある。
服を着ないシーンが多いがゆえの珍事も。「屈強メンバーの方々の“毛剃り待ち”という時間が何度もありました。スタッフの方からの『今、毛を剃ってますので!』という言葉に対してみんなが『はーい』と冷静にその状況を受け入れてしまうという異様さ。全員の頭がおかしくなっていたんだと思います」とどれもが斬新な体験だった。
ところが犬飼にとっては、全裸以上に懸案事項があった。それはダイビングシーン。ダイビング装備を一式着ければ洋服を着ているようなもの。全裸からは解放されるはずだ。だが「実は僕はまったく泳げないカナヅチ。全裸になるシーンが多いこと以上にダイビングをするということの方が怖かった。確実に死ぬだろうと思っていました」と驚きの告白。
それでも主演作のためならばと、練習に練習を重ねてダイビングライセンスを取得した。「この作品に出られること、主演をさせてもらうことは大きい。このチャンスをカナヅチで逃したくはなかった。撮影後半は海中の景色を楽しむ余裕すら持てました」とモザイクをかけられた人とは思えぬ男前な表情だ。
『仮面ライダービルド』で一躍子供たちのヒーローになった。歳を重ねた当時の子供たちも『ぐらんぶる』を見るときが来るだろう。「仮面ライダーは変身して装備をつけて戦うけれど、『ぐらんぶる』は装備をつけて海に潜ります。装備を付けるという部分では仮面ライダーと同じ。仮面ライダーは地上を守っていたけれど、この映画での僕は海を守っています」とヒーローイズムは継承されている。
自粛期間中はアニメや音楽など、好きな趣味を掘り下げる時間になった。自炊にもこだわり、料理の腕もレベルアップしたというが「一番美味しかったのはステーキ。色々と料理を作りましが、結局はシンプル・イズ・ベスト。焼いたお肉が一番美味しい」とかなりの肉食系。
おうち時間を利用し、好きな趣味に没頭し、好きなものを食べた。犬飼は「休みの間はBADに入っていても仕方がないので、前向きに過ごそうと意識。エンタメは不要不急と言われますが、どんな状況でも人々の心を動かすのはエンタメだと思います。暗い世相だからこそ、『ぐらんぶる』のようなバカバカしいくらいに笑える映画を観ていただき、元気の源にしてもらいたい。何事もポジティブに変換していきましょう」と確信を持って呼びかけている。
ストーリー
国内でも珍しい美しい海に囲まれた大学に入った伊織。彼の目標はただひとつ、気のあう友人や可愛い女子と<キラキラな大学生活>を送ること。しかしオリエンテーション朝、なぜか伊織は服も記憶もなく大学の講堂で目覚めてしまう――やがて同じ境遇に陥った無駄にイケメンなオタク・耕平と共にある場所にたどり着く。そこは常識が一切通用しない、超ぶっ飛んだダイビングサークルだった!?最高の学園生活なんて高望み、もうしません!神様お願いします!俺らはただただ“普通の生活”を送りたいんです!どうなる、伊織と耕平のキャンパスライフ!
取材・テキスト:石井隼人
写真:You Ishii
(c)井上堅二・吉岡公威/講談社 (c)2020映画「ぐらんぶる」製作委員会