那須川天心を擁する立ち技イベントRISEが、秋にビッグマッチ「RISE DEAD OR ALIVE 2020」を連発する。10月11が横浜・ぴあアリーナMM大会。11月1日にはエディオンアリーナ大阪第一競技場大会。この2大会で、-63kg級トーナメント、キック最強女王決定トーナメント、そして那須川天心挑戦者決定の日本人トーナメントを行うことになる。
那須川自身は、11月の大阪大会に出場。以前から予定されていた“ミスターRISE”裕樹と対戦する。会見前の独占インタビューで、那須川は裕樹戦についてこう語った。
「裕樹さんは階級制覇して、RISEを大きくしてくれた存在。僕の前の世代でRISEを盛り上げてくれた。でも時代は回ってますから。しっかり終わらせなきゃと思ってます。尊敬の意味を込めてというか“今までありがとうございます”と。でも勝負は勝負なんで、ぶっ飛ばしますよ。今の僕は“情”を捨てたんで」
近年は世界の強豪と対戦することが多かった那須川だが、トーナメント優勝者との対戦も含め、日本人対決についても前向きだ。
「それが今できる最善のことですからね。それに日本人同士の闘いって、やっぱり盛り上がるんですよ。今回もそれが再確認できると思います。僕自身は、コロナの状況があって、しばらく外国人選手とできないなというのは前から考えてましたね。
ただ、トーナメントで勝ち上がった選手が注目されるじゃないですか。“強いな”ってなる。で、その選手を僕がバーン! って倒しちゃうわけですよ。“えっ!?” てなりますよね。前回やった笠原くんもそうだったじゃないですか。僕が(相手のキャリアの)邪魔をしちゃってるのかなっていう(苦笑)。客観的に見るとそうなりますよね。俺が潰しちゃうのかって」
客観的に見ているからこそ、コロナ禍についても対戦相手についても落ち着いて判断ができる。多くの選手から対戦を希望され、あるいは対戦要求されても「腹が立つってことはないですよ」。さらに「僕は“指名手配”されてますからね」と笑ってみせる。
「闘いたいと言われると、前は“ナメてんのか”と思ってたんですけどね。今はそれが(相手にとって)格闘家として生きるための手段なんだろうなと。目立ちたいから名前を出すわけで。僕の名前を出せば話題にはなりますからね。そういう意味では格闘技を盛り上げることはできてるのかなと。でも闘うとなればバチっと倒しますけど」
那須川戦をアピールする選手は多いが「考えて言ってる人と考えないで言ってる人がいる」と那須川。
「言うだけじゃなく、どうプロセスを踏んでくるのかなって。そういう選手がいないんで、何を言われても腹は立たないですね。“あ、そうですか”と」
今の那須川は“迎え撃つ立場”が続くが、モチベーションは下がっていないという。
「いろいろ次に向けて準備をしている段階なので。自粛期間もモチベーションが下がることはなかったですね」
キックボクシングから、次の闘いに進むことをすでに決めているのだ。その時が来るのは、そう遠くない時期だろう。
「自分の中で期限を決めてます。時が来たら言いますよ。格闘技は続けますけどね。出会いもあれば別れもある、と」
常に先を見据えているからこそ、那須川には独自の思考がある。その思考が、那須川をより唯一無二の存在にしている。
文/橋本宗洋