東京・江戸川区は12日、西葛西のフィリピンパブで集団感染が発生したことを公表した。この店には、感染対策をしていることを示す都独自のステッカーが掲示されていた。
ステッカーは6月、小池都知事が会見で発表したもの。都は“感染防止対策を徹底している店”と謳うものの、所定のホームページでチェック項目を入れれば誰でも印刷できる仕組みになっている。そのため、当初から有効性を疑問視する声もあった。
一方、政府でも新たなステッカーを作成中だという。こちらは第三者が直接確認し、チェック項目をクリアすれば配布するという。
これらの施策は効果があるのか。東京工業大学准教授の西田亮介氏は、「感染拡大防止と経済再開を両立させたいという中で、“安心して入れる店”であることをお店自身に提示してもらう考えのもと作られている。一方で、チェック項目も『複数の人が触れる場所や物品を極力減らす』といったように、客観的な基準が書いてあるわけではなく、抽象的な記述が多く、これだけではあまり安心できないことが明らかになってしまった。ステッカーが貼ってある店でクラスターが頻繁に発生してしまうようなら、このステッカーが貼ってあり、適切な対策を行っている店も信用できないと捉えられてしまいかねない」と苦言を呈する。
こうした意識を普及する啓発は重要だとする一方、具体的な感染防止の取り組みも必要だと指摘。「例えば、アクリル板を立てるとかサーモグラフィーを準備するなどといった施策が見られる。ただし、大手のフランチャイズ店などであれば、本部等が準備するなど余裕があるかもしれないが、個人経営の店舗などでは負担も大きい。こうした取り組みより幅広かつ高額の補助を出していくなど、個々の店舗における具体的な感染防止対策や取り組みもあわせて強く補助していった方がいいと思う」とした。
また、緊急事態宣言をめぐり安倍総理は「できるかぎり再宣言を避けるための取り組みを」などと述べている。西田氏はこれが不思議な状況だとし、「本来は感染拡大を防止できないときに、緊急事態宣言を発出することによって、店舗の休業や人々の外出自粛を要請することで、強い形で行動変容を促して感染拡大を抑制する政策ツールだ。ところがこの間、政府は“緊急事態宣言を避けるために”と言ってしまっている。感染拡大を防止する手段であるはずの緊急事態宣言を避けるために~というのはおかしなことだ。感染が広がってしまってからでは、長期間発出しないといけない。前回の緊急事態宣言中、政府批判が強まったこともあって、再度の発出をとにかく避けたいかのように見えてしまう。また特措法に基づく基本的対処方針が5月から更新されておらず、政府の現在のコロナ対策の方向性が国民からすれば分かりづらくなってしまっている」とした。
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