目指すは真のナンバーワンだ。立ち技格闘技イベントRISEが、10月11日(ぴあアリーナMM)、11月1日(エディオンアリーナ大阪)のビッグマッチで女子トーナメントを開催する。
8月13日の会見で発表されたこのトーナメントのタイトルは『RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS 2020』。これまで女子大会のアンバサダーを務めてきた神村エリカによる企画で、神村はプロデューサーを務める。
「各団体にチャンピオンがいる中で、誰が一番強いのか」
シンプルにトーナメントのテーマを語った神村。RISEの伊藤代表は「女子なら団体の壁を超えやすい」と言う。強豪が多い46kgから48kgの選手を主な対象と考えており、トーナメントの契約体重は47.6kg(ボクシングのミニフライ級)となる。
会見にはRISE女子アトム級チャンピオンの紅絹がZoomで参加したものの、正式な出場選手の発表はなかった。神村は紅絹やミニフライ級王者・寺山日葵、シュートボクシングの女神の名前をあげて「出てほしい」とコメントしたものの、まずは選手自身が名乗りをあげるのを待ちたいという。団体も格も関係なく「私が一番強い」とアピールすることが大事だと考えているからだ。
紅絹は会見の中で、イニシャルとしてだがぱんちゃん璃奈とMISAKIとのトーナメントでの対戦を希望。両者は8月30日のREBELSで王座決定戦を行なうことになっており、その勝者もRISE女子トーナメント参戦の有力候補になってくる。
優勝賞金は300万円。さらにKO賞も出るだけに、女子トーナメントとしては破格のスケール。開催の情報に、ツイッターで反応した選手も多かった。
寺山、平岡琴、MISAKI、またNJKFミネルヴァ王者の百花も「絶対出たい」とアピールしており、トーナメント開催の発表自体で女子キックが加速したような状況だ。
神村は現役時代、15歳でデビューするとRISE女子王座をはじめ数々のベルトを獲得。シュートボクシングのトーナメントでも優勝している。RENAと並ぶ女子立ち技格闘技の“顔”であり、超実力派として知られていた。
そのキャリアの中でも屈指のインパクトだったのが、2011年にシュートボクシングのリングで行なわれたRENAとのエキシビションマッチだ。RENAの相手が欠場となり、急きょ組まれたものだったが、エキシビションながら両者は完全な“ガチ”の打ち合いを展開。神村は左フックでダウンを奪ってみせた。エキシビションのため勝敗はつかなかったが、突然訪れた“トップ対決”のチャンスをものにして“神村最強”の印象をファンに植え付けたのだ。
「ノリって大事なんです。やるかやらないか、前に出るか出ないかで自分のキャリアが大きく変わってくる」
会見後にインタビューすると、現役時代も踏まえて神村はそう言った。曰く「イケイケでいきましょう、女子も」。
トーナメント開催を発表した上で、選手のアピールを優先する姿勢も神村らしいスタンスだ。
「私は思ったことを口にするほうなので。やりたいことは自分から言わないと始まらない。待っていても仕方がないじゃないですか。こうしたい、こうなりたい、このベルトがほしい、この階級でトーナメントをやってほしいと自分から言う選手に出てきてほしいんです。発言することはプレッシャーにもなるけど、それが成長を早めてくれる。謙遜してても成長は遅いですから。今の選手は、技術的にはみんなうまいんですよ、私が現役の頃より。ただ気持ちが乗ってこないと技術も出せない。スポーツなんですけど格闘技ですからね。名乗りをあげれば注目もされます。自分でチャンスを作ってほしい。せっかくSNSもあるんですから」
賞金300万円も、選手には大きなモチベーションになると言う。ただしその額に満足はしていない。
「私が現役の時に出たトーナメントは賞金100万円。それでもめちゃくちゃテンション上がりましたね。300万円なんてうらやましいですよ。だけど、これはあくまでスタート。本当は男子トーナメントの賞金(500万円)と同じがよかった。これが今の女子への評価。男子と同格ではないことが、賞金という数字で表れてしまった。私は男子と同じ土俵でやってきたつもりなので、そこは悔しいですね。だから次のトーナメントで賞金が上がるような試合をしてほしい。男子より盛り上がる、男子より魅せられる試合をすることが大事です」
神村エリカという“伝説の女王”の言葉だけに説得力がある。彼女は那須川天心登場前のRISE、あるいは女子格闘技の強さの象徴だったのだ。
そんな神村の目に留まり、選ばれた選手たちによる闘いという意味でも、このトーナメントには価値がある。誰が出場し、どんな内容を残して誰が勝つのか。女子立ち技新時代の到来を告げるであろう闘いだ。
文/橋本宗洋