東京・靖国神社を8月15日にほぼ毎年訪れる女性がいる。稲田朋美衆議院議員だ。かつて防衛大臣(2016年8月~2017年7月)を務め、現在は自民党の幹事長代行(2019年9月~)。安倍総理にも近く、去年は総理の代理として訪れ、終戦から75年の今年も参拝した。
しかし、閣僚の参拝には毎年、「A級戦犯が合祀されている靖国を参拝するな!」「隣国の反感から関係悪化も考えるべき」など多くの批判の声も上がる。14日の『ABEMA Prime』は稲田氏をスタジオに迎え、靖国参拝を欠かさない理由を聞いた。
稲田氏が2006年、初当選の翌年に立ち上げたのが「伝統と創造の会」。自民党の新人議員によって発足(会長は稲田氏)し、メンバーは毎年4月28日と8月15日の2回、靖国神社に参拝している。
超党派の国会議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」との違いについて、稲田氏は「伝統と創造の会は私たちが1回生の時、女系天皇容認になろうとした小泉政権で、それはちょっとおかしいのではないかという署名活動をしたことの延長線上につくった。これは靖国参拝の会ではなくて、教育基本法改正の時や野党時代は谷内(正太郎)先生と岡崎久彦先生に来てもらって勉強会をした。靖国参拝は欠かさずやっているがそれだけの会ではないので、超党派の会とは違っていると思う」と説明。
毎年参拝を欠かさないのは、「今の日本があるのは、大東亜戦争において命をかけてこの国を守ろうとした方々の積み重ねの上にあるんだという感謝の気持ちは忘れないでいたい」からだという。
稲田氏にとって靖国神社はどのような存在なのか。「私のおじも合祀されている。おじは21歳で特攻隊の訓練中に亡くなったが、そういった青年たちのおかげで今の日本がある。おじの気持ちも考えながら参拝をしている」と話した。
靖国参拝に対して2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「ちょっとごっちゃになっていると思っている。元々、1978年まで(A級)戦犯の人は祀られていなかった。命令されて戦争に行って亡くなった、日本を守ろうとした人たちがいたから、みんなで祀って毎年参拝するのはわかる。しかし、その後に戦犯の人まで入れてしまった。戦犯の人を引き離せば、アジアの人たちも『この人たちは日本を守ろうとした普通の人たちだ』とわかりやすくなると思うが、分祀には賛成するか」と疑問を呈する。
稲田氏は「分祀すべきだという考え方があるのもよく理解できる。ただ一方で、一宗教法人が合祀をしている英霊を分祀すべきだと国が言うこと自体、靖国神社とはいえども宗教活動の自由という問題もあろうかと思う」と答えた。
さらに、ひろゆき氏は「国として、A級戦犯は別にして国民が戦った人たちを祀る場所を新しく作ってしまえばいいのではないか」と続ける。これに稲田氏は「大東亜戦争で亡くなった方々、多くの戦死した方々は靖国で会おうということでいる。遺族の人たちも、靖国に行って自分の肉親に会えるというところでもあるので、そう簡単ではない」との考えを示した。
今年の「終戦の日」は、稲田氏のほか、第2次安倍政権発足後としては最多となる4人の閣僚が靖国神社に参拝。中国メディアや韓国外務省が強く非難している。
公人の靖国神社参拝が、周辺国が日本を批判する材料になってしまっている点について、「A級戦犯に政治家が感謝を示しているのがよくないという話。“A級戦犯を分祀しないんだったら政治家としては行かない”と靖国神社に圧力をかけることも可能ではないか。戦争犯罪者に感謝しているということか」とひろゆき氏。
稲田氏は「宗教活動の自由に関することであるし、東京裁判にどういう考えを持つかということもある。私はA級戦犯を分祀すべきだという考え方も分かるし、反対に東京裁判自体が問題だという考え方も分かる。私の考え方は、A級戦犯が合祀されようが、いかなる歴史観に立とうが靖国に行って感謝と敬意を表するのが国民としての権利、義務でもあると思っている」との考えを示す。
こうした議論に対して、慶應大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「戦争で亡くなっていった人に感謝の気持ちを持ち続けるのは大事だからこそ、むしろ靖国神社に行くことにこだわりすぎない方がいいのではないか。形にこだわりすぎることで周辺国が不快な思いをしているとなると、若い世代はややこしく思う。僕は福井の嶺南で長男だから墓を守っているが、今年は母親が帰って来いと言わない。『墓の前にあなたのばあちゃんはいないよ』と。墓参りできなくてもばあちゃんを思っていれば思いは届くわけで、国のために頑張ってくれた人に対しても、参拝に行かなくてもそれはそれで大事にしようということ。その上で、周辺国とバランスを取ろうということはできないのかとずっと思っていた」と指摘する。
また、AV女優の紗倉まなは「もう二度と戦争を起こさないという気持ちを持つことは非常に大切だと思うが、靖国だけにこだわる理由がなかなか深い理解を得られない部分もあると思う。日本には他にも戦争墓地や戦没者の方を弔う場所はあるわけで、時の首相が靖国だけに限らずそうした場所も回るというのは大事な部分だと思っていたが、それはなかなか叶わないものなのか」と質問。
稲田氏は「もちろんそういう気持ちは大事だし、若い人たちがそう思ってくれているのは非常にありがたいことだと思う。一方で、靖国神社に対して特別な思いというか、そこに行けば亡くなった英霊に会えると思って行く人もいる。そういう人たちの気持ちも考えるべきだし、靖国で会おうと言って突撃していったかつての兵士の気持ちも考えるべきではないかと思う」と答えた。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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